ピコ秒レーザーはなぜ低出力でしみが取れるのか?(その6)


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先回(→こちら)のさらに続きです。ピークパワーをコップの大小で例えるところが、いまひとつしっくりこないので、ちょっと書き直してみました。



左がピコ秒レーザーで、右がナノ秒レーザーです。ピコ秒レーザーはメラニンに高い電場を与えることが出来るので、電子の蓄エネルギー能力が高くなります。ピンク色のバー一本をひとつのエネルギー単位と考えて、ピコ秒レーザーではメラニンが6本の蓄エネルギーが出来るとしましょう。ナノ秒レーザーでは3本の蓄エネルギーしか出来ないとします。
メラニンは細胞内小器官であるメラノソーム内にあります。メラノソームの熱緩和時間は50ナノ秒です。従ってナノ秒レーザーでも、もちろんピコ秒レーザーでも、メラノソームの外までは熱損傷を起こしません。しかし、メラニンで吸収され蓄えられたエネルギーは、メラノゾーム内で、メラニン近傍の水分などには伝わります。近傍に、ピンクのバーが3本たまると、その部の水分が気化して、しみが確実に取れる徴候であるIWP(immediate whitening phenomenon)を起こすとします。
ピコ秒レーザーでは、メラニンは6本の蓄エネルギーをしたのち、一気に近傍に放出しますから、近傍の水分は直ちに3本のエネルギーを得て気化します。
一方、ナノ秒レーザーでは、メラニンが3本の蓄エネルギーをしたのち、4本目が近傍に放出されます。5本目も同様ですが、ピコ秒レーザーに比べ、照射時間が長いので、エネルギーはさらに近傍の近傍へと拡散します。結局、近傍に3本のエネルギーが貯まるまでには、エネルギーの総本数は8本必要という感じです。
ピコ秒レーザーの場合は、エネルギー6本で速やかに近傍の水分が気化しましたが、ナノ秒レーザーの場合は、エネルギー8本を要しました。これが、「ピコ秒レーザーでは、ナノ秒レーザーよりも低出力でしみが取れる」ことの、私なりの解釈です。私がもうちょっと賢ければ、数理モデルで記述できるんでしょうが、直観的には以上のような感じです。

さて、話続けます。というよりも、今回はここからが本論です。
しみ取りは、低出力で出来るので、お客さんの痛みも少なく調子が良いのですが、ADM(Acquired Dermal Melanocytosis)とか、大田母斑とか、深いところにあるメラニン色素をとる場合には、ピコ秒レーザー、しみを取る時のような低出力では効かないようなのです。これはこの2ヵ月ほどピコ秒レーザーを使ってみた私の経験からです。
C6やMedliteⅡといったナノ秒レーザーと同じ出力(フルエンス、J/cm2)でなければ取れません。
ピコ秒レーザーがナノ秒レーザーに劣るということではありません。まったく同じなのです。
 
説明は一応可能です。レーザー光というのは、皮膚に当てた後、指数関数的に強度が減衰します(ランベルト・ベールの法則)。
下に図示したように、メラニンがレーザー光によって蓄エネルギー性を有するにためには、そのレーザー光が十分に強くなければなりません。皮膚の深くへ進むにつれて、レーザー光は減弱します。しみ取りの深さでは、ピコ秒レーザーのピークパワーは十分高かったのですが、ADMの深さでは低くなってしまい、ナノ秒レーザーと同様、フルエンス値に依存してくるのでしょう。

上記の私の仮説に従えば、タトゥーの取り方にも、これまでの通説に補足が必要と言うことになってきます。
私のクリニックには、タトゥーを取るお客さんはあまり来ないので、臨床経験に裏打ちされた話ではありません。そこは断っておきます。あくまで私の推測です。
 
タトゥーに用いられる色素は、成分も粒子径も様々です。ピコ秒レーザーには光力学的効果(photodynamic effect)がありますので、金属やカーボンのような硬い色素、とくに粒子径が大きい色素に対してはメリットがあります。ナノ秒レーザーよりも良く取れます。
しかし、有機系の柔らかい色素、あるいは金属やカーボンでも粒子径の細かい色素によるタトゥーの場合、除去にはナノ秒レーザーと同じフルエンスが必要となるはずです。タトゥーはADM同様、深い部分に色素が入っているため、ピコ秒レーザーでしみを取るときのような低フルエンスで除去できるという特性が生かせないからです。
タトゥーによって、ピコ秒レーザーのメリットが活きる場合と、ナノ秒レーザーで取った場合と変わらない場合があるのではないか、というのが私の推測です。
この点、タトゥーをピコレーザーで取る経験の多い先生の印象をお聞きしたいところですね。誰かブログで書いてくれないかなあ。
(2017/07/20記)