HPリニューアル原稿:目袋(下まぶたのふくらみ)取り

 厚労省の方針で、美容外科のHP中の、単純な「before→after」の写真解説が、今年中に規制されて出来なくみたいです。誤解を招きやすいからだそうです。
 それで、HPのリニューアルに向けて、基本的な事項をまとめていこうと考えました。写真は入りますが、単純な「before→after」でなく、むしろ詳細な経過写真と解説なら、趣旨から考えて許されるのではないか?と今のところは考えています。
 HPのリニューアルのためなので、ところどころ、現在のHPやブログの写真と重複しています点、御了解ください
 
 目袋というのは、眼窩内脂肪という、眼球と骨の間にあってクッションのような働きをしている特殊な脂肪が、ヘルニア状に突出したものです。前方は、下まぶたの皮膚や筋肉と、繊維性の膜で仕切られています。この膜が、加齢によってたるんで、ヘルニア状に突出してきたものを、目袋と言っています。

 一方、涙袋というものもあります。涙袋というのは、目袋の上方、下まぶたの縁の直下にあるふくらみです。加齢による変化ではなく、眼輪筋によるふくらみです。目袋は加齢を感じさせますが、涙袋は色っぽさを演出してくれます。
上は、うちのスタッフの一人ですが、涙袋と目袋、両方があります。涙袋は美容的に嬉しいのですが、目袋は邪魔です。

 対処としては、目袋の原因となっている眼窩内脂肪を、結膜側(アッカンベーをしたときの赤目の部分)からの切開によって、取り出してやります(上の解剖のイラストの赤矢印の経路です)。

 術前です(上と同じ写真)。

 紫色のペンで取る脂肪に印を打ったところ(デザイン)です。
(注)上まぶたのたるみに、二重埋没法も同時に行いました(現在の二重のラインより少し上にラインを取り直すことで、かぶさってきた二重の幅を広くしてやる手術です)。

 直後です。
目袋の脂肪は、下眼瞼結膜を切開してアプローチして取り出すので、表には傷はまったく見えません。(青いのは、内出血ではなく、ペンのあとです)

 内出血に関して補足です。脂肪を取り出して切除するときに、小さな血管を電気凝固して止血するのですが、手術を終えた直後には何ともなくても、家に帰ったあとで、焼いて止めたはずの血管から出血して青く腫れてしまうことが、稀にですがありました。ちょうどボクサーが殴られて眼を腫らしたときのような感じです。予防のため、当日の夜は、お酒は控えて、お風呂も長風呂は避けてください。温まって血管が広がると出血しやすいと思われます。

 もし腫れてしまった場合には、ご連絡のうえ、お越しください。血種を取り除いて止血し直します。もっとも、どうしても来られないという場合は、時間はかかりますが、自然に退くのを待っても可です。殴られて眼を腫らしたボクサーが、しばらくすると腫れが退いているようなものです。

 2日後です(2週間後ではありませんよ)。
このスタッフは、内出血もなく、腫れも1日で退きました。うまくいくとこんなものですが、腫れやすい方や、内出血が生じてしまうと、2~3週間のダウンタイムを要します。もっとも、表面上は切ったり縫ったりしたあとは見えませんので、他人にはわかりにくい手術ではあります。

 斜めから見たところ。術前です。

 2日後です。

 上下に並べてみました。上が術前、下が2日後です。

 取れた脂肪はこんな感じです。


 ときどき、ネットなどで予習していらっしゃるのか、「目袋の脂肪は3つのパーツに分かれているそうですね」と質問されることがあります。たしかにそうなんですが、だからといって、3つ取らないといけないというものではないです。

 結膜側を切開して、膨らんでいる目袋の辺りに達すると、自然に脂肪が飛び出てきます。この飛び出た部分・量の脂肪を、血管を丁寧に焼いて血止めしながら、切除するだけの話で、結果的に取り出すべき脂肪塊の数は、1個だったり2個だったり3個だったりします。人によって違います。

 そういう意味(余剰脂肪が自然に飛び出てくるのでそれを切除するだけという意味)では、結膜側からの目袋取りというのは、そんなに難しい手術ではありません。

 ただし、慣れてない先生が、眼窩内脂肪と見誤って、下まぶたの皮下脂肪塊を切除してしまうと、不自然な凹みになったりすることもあるようです。眼窩内脂肪と皮下脂肪とは、脂肪の性状(見た目や軟らかさ)が違うので、慣れた先生であれば間違うことはありません。

 余談になりますが、 「難しい手術」というのは、いろいろありますが、
1)安定した結果が出ない(術者のデザイン力などが関係する)。
2)重大な合併症のリスクが高い。
といったものだと、私は考えます。眼袋取りの手術は、誰がやっても、だいたい似たような結果が出ますし、重大な合併症の報告も無いです。

 しかし、大学の形成外科や皮膚科の医局などでは、こういう手軽な美容手術は行っていないので、誰も教えてくれません。ですから、目袋取りの手術と言うのは、「そんなに難しい手術ではないのだが、習得しにくい手術」と言っていいと思います。わたしの場合は、開業前に、ロサンゼルスの美容外科の先生のところに見学に行ったときに覚えました。

 それで、たまに、知り合いの形成外科の先生から、近々開業するのだが、美容外科の手術も出来るようにしておきたい、ついては、目袋取りの手術を見学させてもらえないだろうか?という問い合わせがあったりします。下に紹介する動画は、うちのクリニックの別のスタッフの目袋取りの動画で、私が説明している相手は、形成外科の先生です。
          (画像または→こちらをクリック)

 こう書いていると、まるで、自分は、形成外科の先生に指導できるくらい上手なんだぞ、みたいな自慢に聞こえるかもしれませんが、そうではなくて、目袋取りのような手術は、形成外科とか皮膚科とかとは、まったく違う次元に存在するものなんだよ、っていうことを強調したい趣旨です。

 例えば、切る眼瞼下垂手術なんかは、形成外科の先生であれば、勤務医時代から圧倒的な数をこなしているはずだから、私のように勤務医時代を皮膚科医として過ごしてきた医者が、形成外科出身の先生をさておいて、それも自由診療価格でやろう、なんて、おこがましくて夢にも思いませんが、こういった目袋取りの手術なんかは、出身科の如何は関係ないんだよ、ということを、形成外科の先生が私のところに見学にいらっしゃるという事実を介して、お伝えしたいということです。

 目袋取りの手術で、内出血のほかに、もうひとつ留意すべきことは、術後の小じわの問題です。

 上のスタッフの術後の写真をよく見ると、
目袋のあったあたりに小じわが一本出てきています。

 膨らんでいた脂肪が抜けた分、皮膚が縮みます。その結果小じわが気になる場合があります。

 これは、
①若い人
②涙袋のある人
ほど目立ちません。また、術後1~2ヶ月気になっていても、だんだん気にならなくなっていきます。ちょうど、お産のあとのお腹のようなもので、ふくらみが抜けたあと、一過性にしぼみはしても、数ヶ月経つと、元の張りを取り戻すのと同じです。

 上のスタッフの場合は②の「涙袋のある人」であったため、小じわが1~2本出ても、直後からすっきりした感じに仕上がったということです。涙袋があると、起伏のためにカモフラージュされやすいということですね。
 目袋の無いあるいは薄い方では、取る脂肪の量をやや控えめにするなどして調節します。

 しかし、どうしても、小じわが心配だ、あるいは、目袋取りをしたあと、小じわが苦になるようになってしまった、という場合には、「下まぶたのたるみ取り」手術(→こちら)をすると良いです。

 下に示す写真は、比較的若い方で、まずは結膜からの目袋取りだけでもよかったとも思いますが、ご本人の希望で最初から「下まぶたのたるみ取り」手術を行った方です。

左上から、術前、デザイン、手術直後。 右上から、翌日、一週間後(抜糸)、1ヶ月後、です。(画像をクリックすると拡大します)

 「下まぶたのたるみ取り」手術の値段は、目袋取りと同じく両目で18万円です。
 ただし、最初の目袋取りのカウンセリングの際に、「あなたは目袋取りだけで大丈夫だと思いますよ」とわたしが見立てたけれども、目袋取りの術後に小じわが気になってしまって「下まぶたのたるみ取り」手術を受けたい、という方については、半年以内であれば、無料で追加手術します。
 また、術後の小じわを気にするあまり、控えめに取りすぎて、目袋が残っている、という場合には、1カ月以内であれば、これまた無料で再手術(追加切除)します。
 元々の価格が安いのに、話がうますぎはしないか?と警戒されてしまったら困るのですが・・大丈夫です。それでもちゃんと儲けは出てますから(^^;。
 大きな欲が無いだけです。愛人居ないし、ゴルフやらないし、車も乗らないもので。
 ・・いったい、お前の人生、何が楽しいんだ?って問い詰められそうですが、こうやって、毎日、お客様の相手して、自分の能力・身の丈にあった施術してるだけで、もうほんとに十分なんですよ。だから「年中無休」でも、全然苦にならないんだろうな(^^;。
 昔、「病気」を治すお医者さんやってた頃は、患者も苦しかっただろうけど、診てるこちらも辛かったし悲しかったです。それを思うと、今の仕事って、健康な人がより幸せを感じるためのお手伝いなんで、ほんとに施術してる私自身が癒されます。ありがたいことです。
(2012年3月28日記)

HPリニューアル原稿:切らない眼瞼下垂手術(タッキング法)について


 厚労省の方針で、美容外科のHP中の、単純な「before→after」の写真解説が、今年中に規制されて出来なくみたいです。誤解を招きやすいからだそうです。
 それで、HPのリニューアルに向けて、基本的な事項をまとめていこうと考えました。写真は入りますが、単純な「before→after」でなく、むしろ詳細な経過写真と解説なら、趣旨から考えて許されるのではないか?と今のところは考えています。
 HPのリニューアルのためなので、ところどころ、現在のHPやブログの写真と重複しています点、御了解ください。

 
 眼瞼下垂とは、読んで字の如くで、まぶたの下がりを言います。眼が開けづらく、視界が狭くなります。

 広い意味での眼瞼下垂には二つあります。ひとつは、加齢にともなって、まぶたの皮膚がたるんで伸びてかぶさってくるもので、「偽性眼瞼下垂」と言われています。

 単純にまぶたの皮膚を、余っているだけ切り取ったり、軽い場合には埋没法(切らない二重まぶた作成法)で対処できます(→こちら)。
 もうひとつは、下図のような症状を呈するものです。通常、眼瞼下垂と言えば、こちらのことを言います。上との区別の意味で「腱膜性眼瞼下垂」と言われることもあります。

症状は、

①額にしわができる。
②眉が上がる
③眼の上が窪む。
④二重の幅が広がる。
⑤瞳孔(黒目)が隠れる。

です。なぜ、これらが生じるかというメカニズムについては、上まぶたを輪切りにした下のような解剖図を見ながら考えるといいです。
正常な上まぶたでは、A(脂肪)B(眼瞼挙筋)C(瞼板)は左図のようですが、眼瞼挙筋腱膜がゆるんだり部分的に断裂すると、A・Bは後退し、眼の上が窪みます(右図)。Cは持ちこたえられずに下がって上まぶたが開けにくくなり、二重の幅が広がります。上まぶたを開けようと、おでこの筋肉を使い始めるので、おでこにシワがよってきます。

 対処法としての手術は二つに分かれます。ひとつは「切る手術」で、下図左のように、上まぶたの皮膚を切開して、ゆるんだ挙筋腱膜をしっかりと確認して引っ張り出し、瞼板に縫い付ける方法です。これは、健康保険適応があり、眼科や形成外科で普通にやられています。

 もうひとつは、皮膚を切開することなく、上まぶたの裏(結膜)側からアプローチする方法です(右図)。わたしはこれを、

①どうしても切りたくない方
②下垂が軽度で、健康保険での「切る手術」の適応がないと判定された方

に対して施術しています。

 機能的な問題があって健康保険の適応がありそうな場合には、形成外科の専門医の先生が、保険診療で丁寧にやってくださるところが多いので、そちらを紹介することにしています。

 くれぐれも、保険診療で済ませられるものとまったく同じ仕上がり・内容の手術を、自由診療の美容外科価格で買わされるなんてことのないように御注意ください。

実際の施術動画はこちらです。

(画像または→こちらをクリック)

以下、この方法についてのまとめです。

 ①「切らない眼瞼下垂手術」は、局所麻酔で10分ほどで終わります。来院したその日にすぐに施術できます(ほとんどの方がそうなさいます)。

Before→Afterはこんな感じです。Afterの写真は直後のものです。まぶたの裏側からの操作なのでまったく腫れません。


②料金について

 両目で18万円、片目で9万円です。上記の方は片目だけなので9万円です。

 ただし「成功報酬」です。というのは、この施術は、ときにうまく糸が掛からなかったりすることがあるからです。とりあえず」やってみて、うまく掛かって下垂が上がって気に入っていただけたら「お買い上げ」です。もし、うまく掛からなかった場合は、お支払いは不要です。「無かったこと」にして、気まずいですけど、お互い笑顔で別れましょう。成功率(うまく掛かる率)は9割くらいです。
 直後には、うまく上がっていても、戻ってしまう場合があります(2~3割)。引っ掛かりが浅かった場合です。一年以内であれば、無料で再施術します。
 残りすなわち6割くらいの方は、半永久的と思われます。といっても、クリニックの開院が8年前なので、数年の経過しか無いわけですが。美容外科の悲しいところで、追跡調査のはがきや電話ができません。家族に内緒でいらっしゃる方が多いですもんね。

 知人数名や常連さんの経過を見ていると、一年以内に戻りの無い人は、その後5年以上経過しても、やはり戻りは無さそうです。

③合併症について

 ごくまれに、術後、麻酔が切れてくる15分ころから、眼が開けていられないくらいの「痛み」を訴える人がいます。その場合は、糸を外してやれば、即座に痛みは消えます。たぶん、小さな血管か神経を糸が挟んでしまったときの症状でしょう。すこしずらした位置で糸を掛けなおすと、こんどは全く痛まなかったりします。
 裏側の粘膜に糸を引っ掛ける関係で、粘膜に少し凹凸が生じ、ゴロゴロ感が生じる場合があります。これは、日にちが経てば、粘膜が平坦に戻って気にならなくなります。
 コンタクトレンズは、直後から可能です。コンタクトの縁が当たるよりもずっと深い位置の粘膜の操作だからです。時に糸の端が角膜に当たって傷をつけることがあります(視力に影響はないがコンタクトの検診の際などに眼科で指摘されることがある)。いったん糸を外してかけ直せば解決します。
 粘膜下で内出血することはありえます。しかし、内出血が皮膚まで達して外から見えることはありません。少し眼がゴロゴロするだけで数日で退きます。

④適応と個人的見解(「切らない眼瞼下垂手術」についての私のポリシー)

 たとえばですが、上の写真の患者さんは、下垂の程度から考えて、健康保険での通常の「切る眼瞼下垂手術」の適応はあると思います。わたしは、そのような方には、健康保険での手術の選択肢があることを、はっきりお伝えします。上の写真の方が、なぜうちで手術を受けたかというと、切る手術は気が進まなかったからです。手術時間も術後の腫れも長いからです。そのような方を対象とする手術です。

 わたしは、「切る眼瞼下垂手術」はもちろん出来ますが、自分のクリニックのメニューに掲げるつもりはありません。当院は自由診療クリニックであり、自由診療というのは、保険診療でカバーされていない、特殊な技術や、純粋に美容目的の施術を扱うところだという、信念とささやかな誇りがあるからです。

 わたしが、信州大式の「切る手術」を自院の自由診療メニュに入れていないのは、この手術を安価な保診療価格で、良心的に丁寧に施術されている、形成外科や眼科の先生がたにする敬意からです。

 一方、「切らない眼瞼下垂手術」は、特殊な術式でまだ普及していないです。考案したのは、元・共立病院、現・真崎医院院長の、真崎先生という方ですが(→こちら)、いずれ普及して健康保険で認められるようになったら、私は自院メニューから下ろそうと思っています。良い術式だと思うので、自分が考案したものでは無いですが普及させたいです。形成や眼科出身で、この術式に関心おありの先生は、いつでも見学歓迎しますので、ご連絡ください。あわせて、保険診療での眼瞼下垂手術希望の患者さんを、紹介させてくださいね。

 また、この手術は、先天性(片方だけが幼い頃から)や外傷性(眼にボールが当たったあとなど)の眼瞼下垂では効果が出にくいようです。先天性の場合は挙筋の発達が悪いため、外傷性の場合はどこかで癒着が生じているからでしょうか?加齢やコンタクトレンズ(とくにハード)によって生じたものは良い適応です。

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 以下に、いくつか、「切らない眼瞼下垂手術」の症例を示します。
このかたは「小さかった頃は、もっと目が大きかったような気がする」と、ご自身で眼瞼下垂を疑って、眼科で相談したのですが、「眼瞼下垂とは言えない」と言われてしまったそうです。

 眼科の先生の「眼瞼下垂とは言えない」というのは、保険診療の立場、すなわち、機能的な問題があって、手術の対象になるような状況ではない、という意味でしょう。上まぶたの縁は、瞳孔上縁にあるし、眼を閉じたり開いたりしても、おでこにしわも寄りません。頭痛や肩こりもないし、眼科の先生がためらわれたのは、無理のない話です。

 切る手術というのは、元に戻すことができません。若い女性です。十分お綺麗なのだから手を加えなくてもいいじゃないですか、と思われたことでしょう。

 「切らない眼瞼下垂手術」は、こういう場合に、活躍します。やってみて、気に入った仕上がりにならなければ、糸を外せばまったく元通りになります。復元可能です。ですから、若い女性の美容目的の施術に向いているといえます。 
 「とりあえずやってみた」施術直後の写真です。
綺麗に引きあがりました。ということは、これだけ分、やはり眼瞼下垂はあったわけです。二重のラインも、ぼやけていたのが、くっきりしました。
 斜めから見たところ。術前→術直後です。
もともとが目の大きな綺麗な方です。お顔全体をお見せできないのが残念ですが、ほんとにお人形さんのようになりましたよ。
 あくまで、元の自分に戻ろうと思えば戻れる軸足を残した上で、いろいろと冒険してみるのは人生が楽しくなるかもです。睫毛をエクステしたり、美容院に行ったりする感覚に近いと思います。
 そういう見地からも、この「切らない眼瞼下垂手術」は、有用だと思います。


 次の方は、右目(向かって左)は、近所のクリニックで「切る眼瞼下垂手術」の施術を受けています。下垂は上がったのですが、手術時間が長く、局所麻酔でとても怖い思いをしたので、反対側(向かって右)は施術を受けるのを止めた、という方です。うちのお客様のご紹介で、その方に付き添われて、いらっしゃいました。

 下の写真は、施術されていなかった左目(向かって右)を、タッキング(切らない眼瞼下垂手術)で上げたところです。
片目だけやった直後というのは、このように左右差が極端に出ます。この方では起きていませんが、反対側の下垂が強調されることもあります(ヘリングの法則)。数時間~数日でおさまって、だいたい左右が揃うので、ちょっと経過を待ってください。

 下の写真は二ヵ月後です。
開いた眼が左右ほぼ同じになっています。

 これは、糸がゆるんだのではなくて、眼瞼下垂とともに奥に引っ張り込まれていた脂肪が、引き出されたためです。この方の場合、ほとんど戻りはありません。
右目(向かって左)は「切る手術」の結果で、左目(向かって右)は「切らない手術」の結果です。
 黒目の開きを比べれば、この方の場合は、「切らない手術」が「切る手術」とほぼ同等の効果があったことが判るでしょう。

 全ての方で、このような結果が出るとは限りませんが、症例によっては、この「切らない眼瞼下垂手術」は本当に有用だと思います。「最初からこの方法でやってもらえばよかった」と繰り返しおっしゃっていました。

 もうお一方、御紹介します。
一見、眼瞼下垂は無く、黒目はしっかり開いているようですが、眼の上の窪みが強く、額に横皺が寄っています。
眼を閉じると、上の写真のように、額の横じわは少なくなります。
 ということは、おでこの筋肉(前頭筋)を用いて、一生懸命眼を開けている状態です。

 タッキング手術をして3日後です。
眼の上の窪みも引き出され、涼しげな眼になりました。綺麗な仕上がりです。効果の出るかたは、タッキング手術だけで、これだけ変わります
 眼を閉じたところ。
おでこの皺も、眼を開け閉めしても、変化がありません。おでこの筋肉を使わなくても、目が開くようになったからです。

 しかし、残念なことに・・このお客様、どうしても違和感や白目の充血が気になり、このお写真を撮らせていただいたあとで、糸を外しました。

 右目(向かって左)は、まったく何ともないそうですが、左目(向かって右)が、どうしても気になるそうです。見た目にはまったく問題無いのですが・・。

 糸がうまくかかって、眼の上の脂肪がしっかり引き出された結果、慣れるまで数日~2週間くらいのことなのですが、違和感や鈍痛、白目の充血(この方の場合は、上瞼をめくってみるとわかる程度のものなので写真ではわかりません)が起きることがあります。

 その期間をやりすごしてクリアすれば、違和感や他の症状も無くなるのですが・・。

 元々眼のぱっちりした方で、出来栄えが良かっただけに、術者としては残念ですが、糸を外しました。糸を外せば、すぐに違和感はなくなり、見た目も翌日には、まったく元に戻ります。

 一年以内でしたら、無料で再手術しますので、気が変わって、またチャレンジしていらしていただけるといいのですが・・。

 性格の良いかたで、眼周りの写真のブログでの使用は、快諾いただいていますので、こういうケースもあると、こうして、御紹介できる次第です。

 ただ、まあ、こういう美容若返りの施術というのは、「やらなくても、生きていくのに不都合でもない医療行為」ですので、お客様の価値感・考え方最優先です。

 ときどき、タッキングの「切らない眼瞼下垂」手術では、こういうことがあります。二重の埋没法もそうですね。見栄えよくできても、何らかの理由で「やっぱり外してください」と言われることはたまにあります。

 笑顔で応じるのですが、内心「もったいないなあ・・」と思います。やっぱり、お1人お1人、皆、私の「作品」ですからね。愛着はあります。
(2012年3月26日記)
  
 

多血小板血漿7:PRP作成法における「2回目の遠心分離」について考える


多血小板血漿6は→こちら
多血小板血漿8は→こちら

 この「血小板シリーズ」は、途中から、どうしたら多血小板血漿を一番合理的に作製できるか?についての、技術的考察になってきました。

 退屈に感じるかたもいらっしゃるかもしれません。すみません。こういう展開の予定では無かったんですが、持ち前の探究心に火がついてしまいました。まあ、そのうちには熱も冷めるでしょう。

 さて、今日の思いつきというか、アイデアを記します。
 血小板というのは、一回目の遠心で採った血漿から濃縮するためには、理論上、必ずいったん沈殿させなければならない、ということを、先回(→こちら)示しました。

 図にすると、こういう流れです。
ここで、問題がひとつあります。(2回目の)遠心後、上清を一部捨てて再浮遊させて作製したPRP液の血小板濃度が、計算よりもかなり少なめになってしまうケースがある、ということです。

血小板はどこにいってしまうのか? 二つ考えられます。

(1)上清に残っている
(2)試験管の壁や底にはりついてしまって取れない

です。

下の写真は(2)を示すもので、
このようにPRP液を作るわけですが、
このように、壁や底にしっかりくっついてしまう血小板があり、試験管ミキサーをかなり長時間まわしても、なかなか取れません。

 抗凝固剤をACD-Aとヘパリン、二種類で採血して比較してみましたが、同程度です。抗凝固剤のせいではなさそうです。

 この溶けない沈殿をへらで取って顕微鏡で見るとこんな感じ。


 多数の血小板が凝集して塊を作っています。

 しかし、これ、血小板の活性化による凝集ではどうもなさそうです。なぜなら、活性化物質(コラーゲンとか)は何も加えられていないから。

 また、血小板が活性化すれば、それはADPを放出するなどして、全体に及ぶはず(二次凝集)ですが、そこまで強い凝集ではありません。

 この凝集塊の出来具合いは、個人差があるようです。また、遠心加速度(×g)を強くするほど、多くなります。

 ここで、上に記した(1)と(2)に矛盾・葛藤が生じます。上清中に残る浮遊血小板を沈殿させるためには、強い×gを長時間かけるべきだ。しかし、そうすると、再溶解してくれない血小板の凝集塊が増える・・

 凝集塊をつくりやすい人では、二度目の遠心をかけて濃縮したはずなのに、再溶解後の濃度が、その前の血小板濃度よりも低くなってしまうことすらあります・・。2回目の遠心はしないほうがいいということになってしまいます。いったいどうしたものでしょうか?・・

 それで、次のような工夫を思いつきました。
一回目の遠心でできた血小板浮遊血漿を、少し取っておき、残りを2回目の遠心にかけます。2回目の遠心後の上清はすべて捨てて、そこに取り置いておいた血漿をいれて混和します。

 これなら、2回目の遠心で、どんなに血小板の凝集塊が出来てしまっていても、最初の血漿よりも血小板濃度が薄くなってしまう、という心配はいりません。

 この方法の利点は、もう一つあります。計算上、2回目の遠心における壁や底への固着率が何%であろうと、最初に示した「上清を一部捨てる」方法よりも、PRP液の最終濃度は高くなります。

 解りやすく、下図のように、「血小板が12個」の血漿を想定して、2回目の遠心による「壁や底への固着率が25%」の場合を計算してみましょう。
 上清の一部を捨てて残りで混和する方法(通常、皆、この方法でPRP液を作製していると思います)では、12個の血小板のうちの3個が使えなくなりますから、最終的に使用できるのは9個です。
しかし、血漿の一部を取っておき、これで再浮遊させることにすると、固着する血小板は2.25個で、使用できる血小板は9.75個です。上の方法よりも多いです。
 やっぱり、退屈ですかね?(^^;・・自分的には、思わず膝を叩いてしまうくらい良いアイデアだと思ったんですが・・。

 いずれにせよ、このPRP治療、最終的な血小板濃度が担保されるためには、あちこちにある「落とし穴」を避けていかなければならないようです。現時点で、私がはっきりと言える事は、市販のPRP作製キットを買って手順書に従って作製したからといって、本当にPRP液(多血小板血漿)が出来ているとは限らないということです。患者によって元々の血小板濃度が少なかったり、遠心分離の途中で凝集しやすかったりさまざまだからです。

 PRP療法の効果にばらつきが多い理由のひとつは、こういう、最終的なPRP液の血小板濃度が個々のケースで確認されていないためではないか?と現在のところ私は考えています。
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 ところで、久しぶりに成長因子入りPRP療法の話題に戻って、「フィブラストスプレー」(成長因子)の写真を示します。

 表はこうですが、
裏面は、
赤字で大きく「禁注射」と印刷されています。

 これ、注射したら、いかんでしょう?たとえ、「同意書」があったとしても・・。

 だって、同意書には、こんなにはっきりと赤字で「注射するな」と警告されてる薬剤です、とは書いてないでしょうからさ。

 仮に注射剤として使用する場合は、札幌医大の小野先生がそうなさってるみたいに、大学の倫理委員会通すなど、研究計画を第三者機関に説明して了解を得て、その上でさらに患者に説明してやるべきものじゃないかなあ。

 こんな、赤字で「禁注射」って大きく記されてる薬剤を注射して、もしも繊維性の回復不能な凹凸の合併症作ってしまったら、いくら「患者の同意があった」って主張しても、立場弱いと思うよ。

 わたしは、このフィブラストスプレー、とりあえず問屋さんに一本発注してみたんですが、この「禁注射」の表示を見て、絶対にこれを他人に注射するのは止めとこう、と思いました(自分に打って実験してみようかは悩み中)。
(2012年3月17日記)

切らない眼瞼下垂手術・その5


 眼瞼下垂手術についての私のポリシーは→こちら

 切る眼瞼下垂手術については、機能的な問題がある場合には、形成外科の専門医の先生が、保険診療で丁寧にやってくださるところが多いので、そちらに紹介することにしています。
 くれぐれも、保険診療で済ませられるものとまったく同じ仕上がり・内容の手術を、自由診療の美容外科価格で買わされるなんてことのないように御注意ください。

 切る眼瞼下垂手術を非保険の自由診療でメニューに掲げているところは、それだけで不誠実と判断していいです。
 
 さて、「切らない眼瞼下垂手術」は、真崎先生という方が考案した方法ですが(→こちら)、手軽でよい方法であるにも関わらず、普及していません。形成外科や眼科の先生がたにもっと知っていただき、将来的には健康保険適応がなされると良いのになあ、と思います(その価値は十分あります)。

 当院の宣伝というよりも、その普及キャンペーンの一環として、再び症例を紹介させていただきます。写真使用に御諒解いただきましたお客様、有難うございました。

 まずは、この方。
右目(向かって左)は、近所のクリニックで「切る眼瞼下垂手術」の施術を受けています。下垂は上がったのですが、手術時間が長く、局所麻酔でとても怖い思いをしたので、反対側(向かって右)は施術を受けるのを止めた、という方です。うちのお客様のご紹介で、その方に付き添われて、いらっしゃいました。

 下の写真は、施術されていなかった左目(向かって右)を、タッキング(切らない眼瞼下垂手術)で上げたところです。
片目だけやった直後というのは、このように左右差が極端に出ます。この方では起きていませんが、反対側の下垂が強調されることもあります(ヘリングの法則)。数時間~数日でおさまって、だいたい左右が揃うので、ちょっと経過を待ってください。

 下の写真は二ヵ月後です。
開いた眼が左右ほぼ同じになっています。
 これは、糸がゆるんだのではなくて、眼瞼下垂とともに奥に引っ張り込まれていた脂肪が、引き出されたためです(→こちら)。この方の場合、ほとんど戻りはありません。
右目(向かって左)は「切る手術」の結果で、左目(向かって右)は「切らない手術」の結果です。
 黒目の開きを比べれば、この方の場合は、「切らない手術」が「切る手術」とほぼ同等の効果があったことが判るでしょう。

 全ての方で、このような結果が出るとは限りませんが、症例によっては、この「切らない眼瞼下垂手術」は本当に有用だと思います。「最初からこの方法でやってもらえばよかった」と繰り返しおっしゃっていました。

 もうお一方、御紹介します。
一見、眼瞼下垂は無く、黒目はしっかり開いているようですが、眼の上の窪みが強く、額に横皺が寄っています。
眼を閉じると、上の写真のように、額の横じわは少なくなります。
 ということは、おでこの筋肉(前頭筋)を用いて、一生懸命眼を開けている状態です。

 タッキング手術をして3日後です。
眼の上の窪みも引き出され、涼しげな眼になりました。綺麗な仕上がりです。効果の出るかたは、タッキング手術だけで、これだけ変わります

 眼を閉じたところ。
おでこの皺も、眼を開け閉めしても、変化がありません。おでこの筋肉を使わなくても、目が開くようになったからです。

 しかし、残念なことに・・このお客様、どうしても違和感や白目の充血が気になり、このお写真を撮らせていただいたあとで、糸を外しました。

 右目(向かって左)は、まったく何ともないそうですが、左目(向かって右)が、どうしても気になるそうです。見た目にはまったく問題無いのですが・・。

 糸がうまくかかって、眼の上の脂肪がしっかり引き出された結果、慣れるまで数日~2週間くらいのことなのですが、違和感や鈍痛、白目の充血(この方の場合は、上瞼をめくってみるとわかる程度のものなので写真ではわかりません)が起きることがあります。
 その期間をやりすごしてクリアすれば、違和感や他の症状も無くなるのですが・・

 元々眼のぱっちりした方で、出来栄えが良かっただけに、術者としては残念ですが、糸を外しました。糸を外せば、すぐに違和感はなくなり、見た目も翌日には、まったく元に戻ります。

 一年以内でしたら、無料で再手術しますので、気が変わって、またチャレンジしていらしていただけるといいのですが・・。

 性格の良いかたで、眼周りの写真のブログでの使用は、快諾いただいていますので、こういうケースもあると、こうして、御紹介できる次第です。

 ただ、まあ、こういう美容若返りの施術というのは、「やらなくても、生きていくのに不都合でもない医療行為」ですので、お客様の価値感・考え方最優先です。

 ときどき、タッキングの「切らない眼瞼下垂」手術では、こういうことがあります。二重の埋没法もそうですね。見栄えよくできても、何らかの理由で「やっぱり外してください」と言われることはたまにあります。

 笑顔で応じるのですが、内心「もったいないなあ・・」と思います。やっぱり、お1人お1人、皆、私の「作品」ですからね。愛着はあります。
(2012年3月2日記)