中間分子量含有ヒアルロン酸化粧水の販売(通販含む)開始します


中間分子量ヒアルロン酸は、私が製作販売している化粧品の主成分です。現在のところ、これを使用した化粧品は日本では他にありません。製品名を明示すると、ブログ記事が薬事法第86条(未承認医薬品の広告禁止)に抵触するおそれがあるので、製品名を伏して一般名である「中間分子量ヒアルロン酸」に置き換えて記事を書いています。関心のあるかたは検索あるいはクリニックHPから探してくださいね。


 表題のオリジナル化粧品について、本日は記します。

 私が製作した化粧水は、HAFi(中間分子量ヒアルロン酸断片)に相当する分子量分画のヒアルロン酸のみを用いた、今のところ国内唯一の製品です。

 
昨年12月にネット上で先行報告されたスイスのSaurat教授らの論文(Inhibition of Putative Hyalurosome Platform in Keratinocytes as a Mechanism for Corticosteroid-Induced Epidermal Atrophy.Barnes L et al. J Invest Dermatol. 2012 Dec 6. doi: 10.1038/jid.2012.439. [Epub ahead of print])をたまたま見つけて、これは面白いと考えて、急きょ私が製作したものです。
 
 何が面白いって、この中間分子量(MW 5万~40万)のヒアルロン酸、ステロイド(副腎皮質ホルモン)による皮膚の萎縮を防止する作用があります。
 
 肌荒れに縁が無い方は、ステロイド(副腎皮質ホルモン)と言ってもピンと来ないかもしれません。皮膚科でもっともよく処方される塗り薬です。湿疹やアトピーなどの炎症を抑える作用は素晴らしいのですが、長期的に使うと、皮膚が萎縮して薄くなるなどの副作用が生じます。

 とくに、アトピー性皮膚炎の方は、もともと表皮のバリアが弱いために外界からの刺激に反応して皮膚炎を生じてしまうので、皮膚萎縮と言うこの副作用は厄介です。ステロイドで炎症が抑えられても、いざそれを中止しようとすると、皮膚萎縮のため外界からの刺激を受けやすくなるというジレンマに陥って、止めるに止められなくなることがあります。無理に止めようとするとリバウンドと呼ばれる皮膚炎の悪化を起こします。リバウンドは、ステロイドを止めた後、副作用である皮膚萎縮が回復するまでの間に、様々な刺激に過敏に反応してしまうことが原因です。

 「HAFi(中間分子量ヒアルロン酸断片)は、このステロイドによる皮膚の萎縮を防止する」、というのが、Saurat教授らの研究結果です。早速、市販のヒアルロン酸美容液のメーカーに問い合わせて、HAFiのレンジに入るものは無いか?と探したのですが、見つかりませんでした。ほとんどの製品は分子量100万以上、あるいは「スーパーヒアルロン酸」と呼ばれる浸透力の高さを売りにするものは、1万未満だったのです。

 しかし、このまま放置するには、あまりに惜しい話なので、ここは一番、自分でHAFi領域のヒアルロン酸含有化粧品を作ることにしました。「ステロイド外用剤の副作用を防止する」という効能を考えると、医薬品でも良いくらいなのですが、そこまでの研究開発に投資するだけの力は私にはありません。しかし、化粧品(保湿剤)として世に出すことなら出来ます。

 発売元は株式会社深谷です。わたしが代表取締役を務める会社で、親譲りの不動産の管理会社です。この定款を変更して化粧品の販売を加えました。

 他の論文を調べると、HAFiには、加齢による高齢者の皮膚の萎縮をも、改善させる効果があることがわかりました(Hyaluronate fragments reverse skin atrophy by a CD44-dependent mechanism. Kaya G et. al.PLoS Med. 2006 Dec;3(12):e493.)。もっとも、測定可能な皮膚萎縮改善効果が確認されたのは、60~88才の肌においてであって、それより若い人の肌では確認できなかった、と記されてはいます。しかしこれは、60才以下の肌では無意味ということではなく、むしろ、60才以上のはっきりと萎縮した皮膚さえも、若返らせる、と解釈すべきでしょう。

 中間分子量(5~40万)のヒアルロン酸になぜこのような効果があるかというと、これは一言でいうと、羊水中のヒアルロン酸サイズに近からだと考えられます。

 胎児の皮膚は、羊水中で成熟して、外界に出てきます。この羊水中のヒアルロン酸の分子量が、約10万で、HAFiのレンジなのです(補記ご参照ください)。
 ステロイドや加齢で萎縮した表皮の分裂増殖を促すメカニズムは、羊水が胎児の表皮を育てるメカニズムと同じなのでしょう。 

 使用感ですが、通常の市販の分子量100万以上のヒアルロン酸美容液に比べると、分子量100万以上のものでは、とろみ・ぬめり感が塗った後も長く続くのでに対し、中間分子量ヒアルロン酸では、最初ぬめり感があるのが、数分でさらさらになります。分子量がやや低い分、肌の表層(角層)の間に入り込み易いのでしょう。「はじめぬるぬるあ、あとさらさら」で、とても感触がいいです。
 ですから、現在ご使用中のお化粧品の、洗顔後乳液を塗る前のどの段階にでも(化粧水の前後あるいは化粧水の替りとして)、「一品加える」という感覚で使うことができます。

  ちなみに、関節滑液中のヒアルロン酸のサイズは約600万です。この分子量サイズになると、とろみが強く、関節での摩擦を軽減するという働きに適しています。ヒアルロン酸と言うのは、分子量サイズによって、いろいろな機能を生体で担っているということのようです。

 また、美容でしわに注入するフィラーとしてのヒアルロン酸製剤の分子量は、とてつもなく大きいです。どのくらい大きいかと言うと、分子量100万くらいのものが10万個くらい架橋されているので、分子量としては100万×10万ダルトンになります(だから分解されにくく、数ヶ月から数年持ちます)。

 当初、アトピー性皮膚炎でステロイド使用中の方に向けた通販専用サイトの予定だったのですが、中間分子量ヒアルロン酸は加齢による皮膚萎縮へのアンチエイジング効果や、アトピー以外の疾患でステロイド内服中のかたにみられる皮膚萎縮をも改善することが確認されているので、こちらの美容のブログでも御紹介することにしました。

補記)
 ヒト羊水中のヒアルロン酸分子量について調べた報告が、The origin and fate of hyaluronan in amniotic fluid. Dahl LB et. al. J Dev Physiol. 1989 Oct;12(4):209-18.)にありました。



 Aは胎生16週、BCDは40週です。40週に3つのパターンがあるのは、羊水中のヒアルロン酸濃度を<1μg/ml(B)、1-5μg/mlμ(C)、>5μg/ml(D)で分けているからです。著者は「分子量100万以上の大分子量のピークは採取時のコンタミであろう」と考えています。

 具体的なヒアルロン酸濃度は、Aでは17.6μg/ml、Bは0.79μg/ml、Cは1.88μg/ml、Dは44.2μg/mlでした。ほかの研究者による報告でも、胎生16週頃の羊水中ヒアルロン酸濃度は21.4μg/ml、40週では1μg/mlであり、胎生16週頃には、分子量10万をピークとするヒアルロン酸が、羊水中に増えるようです。

 一方、表皮の角化は、胎生16週~24週に起こります。この時期に皮脂腺・汗腺・毛髪などの皮膚付属器官ができ、皮膚のおおよそが整います。

 ですから、中間分子量含有ヒアルロン酸化粧水の分子量(5万~11万)は、胎生16週、表皮が角化する時期の羊水中のヒアルロン酸の分子量に、ほぼ一致します。 
(2013年3月27日記)