ボトックスの内出血を減らす工夫

 
 目周りと言うのは、血行の豊富なところで、ここにボトックスやヒアルロン酸を打つと、内出血することがあります。頻度は・・そうだなあ、20~30人に一人くらいでしょうか?一人に数か所打ちますから、100~200回に一回くらいの確率です。

 もっとも、針がとても細いので、内出血と言っても大きなことにはなりません。下の写真は、ボトックスを目周り4か所に打って、一か所内出血してしまったところ。注射翌日です。


お化粧(コンシーラー)で隠すと、下のようです。


 だから、それほど問題にはなりにくいのですが、それでも、内出血起こさないに越したことはありません。

たまたまご縁があって、「STAT VEIN」という機械を購入することにしました。


 これはどういうものかというと、乳幼児で血管がほとんど見えないような場合に、採血や点滴のための針を刺す時に使うもので、私も話には聞いたことはあったのですが、実際に手にしたのは初めてです。
 理屈は、赤外線を照射してやって、赤外線が血管(ヘモグロビン)に吸収されることを利用して可視化するのだそうですが、赤外線と言うのは目に見えない(非可視光)なのに、なぜ赤色に見えるのか?と不思議だったのですが、血管の乏しい皮膚に当たった赤外線は反射されて機械に戻ります。この、赤外線が反射されてきたエリアに、赤色の可視光を照射しているとのことです。なるほど。

 実際に、スタッフで血管が見えにくい人に、この機械で血管を確認しながらビタミン注射してみました。



  
  
 
 なるほど、入れやすい。確かに便利ですね、これ。
 
 どのくらい便利かと言うと、最近の車は、バックモニターって付いてるじゃないですか。それまでバックモニターの付いてない車で車庫入れしてた人が、はじめてバックモニター使って車庫入れする感じ。その程度に便利です。無ければ無いで、済むのでしょうが、使ってしまうと、便利なので手放せなくなる、そういう種類の「便利」さです。
 
 この機械を持ってきてくれたテクノメディカというメーカーの営業の方によると、「ボトックスを目の周りに打つ時に、内出血を避けるために有用ではないでしょうか?」とのこと。メーカーの営業の方のアイデアにしては、気が利きすぎなので、どこか他の美容系のクリニックの先生の発案なんでしょう。
 
 しかし、愛知県内では、この機械、小児科を中心に100台くらい納入されているとのことですが、美容外科で購入したところはまだ無いそうです。それほどむちゃくちゃ高いものでも無いので、ちょっと使ってみることにしました。
 
 目周りにこの機械の光当てると、こんな感じ。
  
 

 どうも、凹凸の影を若干拾うみたいです。上記のメカニズムから考えて、凹凸のあるところは、赤外線が反射しても、反射光が斜めにずれてしまって機械にまっすぐ戻らないので、機械の側では「赤外線が吸収された」と判断してしまうみたいですね。
 

 それでも、たとえば上記の二点は確実に血行の少ない個所でしょうから、内出血を避けたい、という観点からは、この2点に打てばいいということになると思います。
  
 通常、、目周りには、私は均等間隔に4か所打つのですが、一か所の量を増やしてこの2か所に打ってもいいのかもしれません。そもそも4か所に分けなければならない、という根拠も無いわけだし(眼輪筋というのは、目周りを取り巻いているので、そのどこかに打てば全体に効きます)。
  
 ほかにこの機械の美容領域(プチ整形)での使い道としては、静脈瘤の硬化療法なんかにいいかもしれません。
  
  
 硬化療法と言うのは、拡張して瘤状になった血管に硬化剤を注入していくのですが、この機械があると、血管の同定が簡単そうです。

 ほかには、手の甲にヒアルロン酸を打って手をふっくらさせる施術があるのですが、このときも、血管を避ける(内出血防止)という意味で役にたつかもです。

 地味ですが、あれば便利な機械のご紹介でした。「こういう機械を備えています」と言った方がお客様を安心させられるのか、「こんな研修医が使うような機械などなくてもうちは困りません。血管は外さないし、内出血もおこしません」と断言した方が自信ありげで格好いいのか、そこは微妙なところです(^^;。一応うちは、愛知県内の美容外科としては最初に購入することにしました。
 

追記:購入して約一ヶ月たちました。やっぱりこれ、眼周りにボトックスやヒアルロン酸打つときに、有用です。この一ヶ月、大きな内出血は起きませんでした。
ボトックスは結局2点内ではなく、4点打ちのままです。血管疑われる部分を避けて打つのに慣れて来たので。
 
(2013年8月28日記)