なぜ2回の施術が必要か?

(これは、鶴舞公園クリニックアトリエのHP用下書き原稿(アートメイク施術)です。ご参考までにUPします。これまでの記事は→その1その2その3その4
 
 アートメイクは、約4週間の間隔をあけて、2回の施術が基本です。なぜ、「2回」なのでしょうか?
 デザインや色調の微調整のため、ということもあるのですが、それ以上に実は大きな理由があります。それは、「表皮のターンオーバーが4~6週である」ということです。

 皮膚は、表皮と真皮に分けられます。表皮というのは、再外層のよろいのような構造で、外界に対するバリアとして働きます。真皮はコラーゲンなどが豊富で、ふっくらした柔らかさを保ちます。
 表皮では、たえず細胞が分裂増殖していて、基底層から最外層の角層まで、約4~6週間かけて押し出されていきます。いわゆる「垢」は、表皮細胞が最終分化して角層となったあと、剥がれ落ちたものです。
 
 アートメイクは、色素を針で打ち込んでいくわけですが、このとき、直後には、色素は角層から真皮浅層まで入り込みます(下図)。

(黒丸が色素)

 数日すると、まず角層の色素(というよりも染色された角層)が、剥がれ落ちます。薄いかさぶたが剥がれるような感じです。そのため少し色が薄くなります(下図)。

 


 ついで、約4週間(刺激を受けたために若干ターンオーバーが早くなるかもしれない)かけて、表皮が入れ替わります。すなわち表皮内に入り込んだ色素は全部取れてしまいます。真皮に入り込んだ色素のみが残ります(下図)。

 


 真皮は、表皮のように外に剥がれて入れ替わるということがないので、真皮に入り込んだ色素はそのまま残ります。この色素は、2~3年かけて消えていきます(酸化鉄を含む色素の場合はピンク~オレンジ色に変わっていく)。

 ※ ※この2~3年かけて消えていく根拠を「真皮の浅いところに入っているからだ」と説明されていることがありますが、そうではなく、色素の黒色調が、カーボン粒子ではなく、高分子量のオーガニック(有機系)の場合は、生体内でゆっくりと低分子へと分解されていくからだと考えられます。浅くても深くても、真皮まで入った色素は簡単には排出されません。その証拠に、酸化鉄の赤色は長期間残ります。

 以上のような理由で、アートメイクの仕上がりというのは、色素が入った直後ではなく、約4週間経ったあとで判断しなければなりません。

 実際の例です。

術前


アートメイク直後


4週間後


 直後の色調があまり濃いと、なかなかアートメイクに踏み切れないです。上(二番目)の写真程度が限界かな?といったところです。4週間めにはかなり薄く自然な仕上がりになっています。

 上は、うまくいった例ですが、実際には、4週間たったら、ほとんど全部色が取れてしまった、ということもありえます。
 それは、表皮の厚さには、個人差・性差・年齢差があるからです。

 下図は、若い人と年配の人の皮膚の断面を並べたところです(左が若い人、右が年配の人)。年配の方では表皮の厚さは約半分です。


 表皮の厚い方には、やや深く、薄い方には浅く、針を打たなければなりません。ある程度は経験的に解りますが、それでも第1回目の針の打ち方では浅く、4週間経つとけっこう取れてしまった、ということは、あり得ます。それで、4週間後に一度見せていただいて、色の入り具合を見て、追加打ちするということです。

 このあたりの考え方は、施術者によってもいろいろありますが、当クリニックでは、最初は控えめに浅く、4週間後に仕上がりを見て、2回目の打ち具合で調整する(色が薄くなってしまった場合は一回目よりも深くしっかりと打つ)という方針でやっています。なぜなら、最初からしっかり深く針を打つと、痛いし、直後の仕上がりがくっきりすぎて、数日間は「海苔を貼りつけたような」感じになってしまうからです。最初は浅めにやってみて色が乗れば、それに越したことはありません。

 その一方で、「せっかくお金を払ってアートメイクしたのに、4週間くらいしたらすっかり薄くなってしまった」では、クレームの元です。ですから、施術者によっては、痛みや数日間のダウンタイムを覚悟していただいた上で、最初からしっかりと入れてしまう人もいます。考え方ですね。
(2014年2月3日記)