PRP療法11月以降もできそうです(認定再生医療等委員会について)・その2


その1は→こちら

昨日から各方面にメールを送り、早速数名のクリニックの院長先生から是非お願いしますとの返信がありました。
その一つが興味深かったので引用します。

=====(ここから引用)=====
PRP審査の件でお誘い頂き、ありがとうございます。
先生のブログを拝見するまでは到底無理だと諦めておりましたので、何か方法があるかも、、、というだけで嬉しいです。
去年11月のPRP研究会で厚生労働省のお役人が来られて再生医療等安全確保法の話がありました。
その話では、まず施設にCPC(Cell Processinng Center)もしくは CPFがあるのが大前提(当院はそこからして無理)で、そこでOKが出たらそれから委員会を組織して、、、だったように理解していました。
もしも当院のような小さなクリニックでもPRP治療の認可がおりるならチャレンジしたいと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。
=====(ここまで引用)=====


ここで引き合いにされている「PRP研究会に来た厚生労働省のお役人」というのは、この方だと思います。
厚生労働省医政局研究開発振興課再生医療研究推進室 飛田護邦先生
http://prp.kenkyuukai.jp/about/
名前で検索すると、順天大形成の歯科医師のようです。
http://www.juntendo.ac.jp/staff/keisei_geka/

私はこの研究会に出席していなかったので、どんな話がなされたのかは解りません。歯科医師であればPRPの作製・施術にそこまで厳格な無菌施設は不要であることは御承知のはずですから、聴講した先生の勘違いではないか?と思ったのですが、たまたまネット見つけた、みやた形成外科・皮ふクリニックの宮田先生のブログに下記のような記載がありました。
=====(ここから引用)=====
さて、学会(注:形成外科系の美容外科学会:JSAPSのこと)においては評議員会が開催され、再生医療に関する法の施行に伴う医療機関届け出や審査の説明がおこなわれました。PRPなど当院でもおこなっている治療もその法律の規制の下に置かれる可能性があります。現時点ではまだ明確なことが分からないままですが、最低ラインの三種というものに該当する治療でも、外部と遮断した換気・衛生環境のある施設のみが認められる可能性があるそうです(学会内の委員会でも見解が分かれています)。高額な設備投資と専用施設を要するため、そうなった場合には当院ではPRP治療が出来なくなる可能性があります。今年5月に差し迫っており、また詳細は学会で検討するようです。
ただこの法律は細胞培養もしくは加工をする事に対する規制であり、PRPは単に遠心分離して濃縮するだけなので、それが本当に該当するのかどうか。。。。

http://ameblo.jp/miyatakeisei/entry-11976696508.html
=====(ここまで引用)=====

うーん。
私は、PRPの作製にそんな大層な施設や設備は要らないし要求されてはいないと思うけどなあ。
たしかに、厚労省支援サイトに「細胞培養加工施設の構造設備チェックリスト」(→こちら)があります。必ず添付しなければならないことになっています。
しかし、ここでいう「細胞培養加工施設」というのは、字句通り、PRPを実際に作製する場所のことを言っているのであって、必ずしもお二人がイメージするような大げさなものでは無いと私は解します。

飛田先生の「施設にCPC(Cell Processinng Center)もしくは CPFがあるのが大前提」というのは、そりゃそうでしょう、作製する場所が無ければ作れません。宮田先生の「外部と遮断した換気・衛生環境のある施設のみが認められる」というのは、クリニック程度の衛生的な環境のことを言っているのであって、「細胞培養加工施設」という名称から、失礼ながら、お二人とも、過剰に恐れおののいているのではないでしょうか?

ところで、2年ほど前、私が自作キットでの簡易安価なPRP作成法をPRP研究会で報告したときに、同じく演題を出していた株式会社細胞応用技術研究所という企業があります。
http://l-cat.co.jp/service.html
これはどういう会社かというと、PRP作製の外注受託をいたします、というところです。クリニックで採血したら、それを回収してPRPを作製してまたお届けにあがります、というベンチャー企業です。

もしもお二人の先生がイメージするような、本格的な大学実験室並みのCPC(CPF)でなければPRP作製は不可ということになれば、この企業はビジネスチャンスと考えるでしょうね。

しかし、これを用いると、PRPの施術は非常に高額なものになるでしょう。少なくとも東京以外では採算は取れないと思います。いや、今の日本では、東京でも無理かも・・。
もちろん私は受託サービスは利用せずにPRPから撤退します。一回のPRPの施術に5万円以上の代金を設定することは私には抵抗があります。一回の施術に20万~30万を請求するぼったくり系の美容外科なら、こういう外注委託活用できるかもですけどねー。

あるいは、手術室に小さなクリーンベンチ買って置いて、CPC(CPF)ということにするかな・・。しかし現実問題不要だから買っても邪魔になるだけだろうな。ばかばかしい。
美容外科クリニックには手術室がありますから、そこに数万円の
小型クリーンベンチ買って置けば無菌操作が可能です。

前回の記事にも書きましたが、PRP療法で、感染を起こしたケースとかが存在し、問題となっていれば、話は別ですよ。それなら対策としてこういうことを強化すべきだというのは解る。
しかし、これまでまったく問題が生じていないのに、PRP作製に研究室並みのCPC(CPF)が必要だと主張する人がもしいたとしたら、それは、

1) 既に何らかの理由でCPC(CPF)を有する施設(大学など)が、施術を独占したい。
2) PRPを外注委託する企業を育成したい。

のどちらかの意図だと思います。
あるいは非常に潔癖な性格の方で、何が何でも(現状で問題が生じていなくても)厳密な無菌環境でPRPを作製すべし、と考える方もいるのかもしれませんが。いや、もしそうだとしたら現場としてはかなりな迷惑です。

とにかく私は、PRPにおいて「細胞培養加工施設」は、単に作製する場所と言う意味で必要で、それはクリニック程度の「外部と遮断した換気・衛生環境のある施設」であれば良いということだと解しますよ。
また、「清浄度管理区域」や「無菌操作等区域」という語が出てきますが、これも字句通りのことであって、手術室は清浄度に配慮されて設計・管理されているし、手術は無菌的操作で行われますがクリーンベンチ内で行われるわけではないでしょう?要するに、手術室で手術がなされるのと同適度の清潔環境・無菌操作でPRPが作製されれば良い、そういうことですよ。

考えてもみてください。アメリカでもヨーロッパでも、PRP作製にそんな厳格な施設基準で規制かけてる国、どこにも無いじゃないですか。日本だけ厳格化する必然性が無いです。

その3に続く→こちら
 
(2015年1月16日記)