目の下に注入したフィラーの除去


「当院の診療メニューのスリム化について」という記事(→こちら)をUPして「しばらく手術休止します」宣言したちょうどその日に、ちょっと珍しい手術したので、お客様の御了解を得て御紹介です。

下瞼に何か入っています。ご本人のお話では10年くらい前に溶けないフィラーを入れたとのこと。たぶん涙袋を作ろうとしたんでしょうが、当初は良かったのかもですが、重さでずれ落ちて目袋状になっています。ちなみに私はフィラーで涙袋を作ってくださいと言われても一切お断りしていますが、長期的にこういうことになりうるからです。溶けるヒアルロン酸で作ったとしても、しぼめば皮膚がたるむだろうし。

術前

 切開して裏側から取れそうな気がします。デザインと膨隆部のマーキング。

下図は左側を切開したところです。 膨隆していた部分はやや硬い脂肪様で、眼輪筋の中にあるか癒着している感じです。
 
下方に引っ張ったところ。一部見えているのは眼窩内脂肪。

上に引っ張ったところ。マーキングした部位で切離しました。このあと下方にもアプローチしてやや固い余剰組織もいくつか取りました。
 
これは向かって右側。盛り上がりの大きい方です。左よりやや柔らかく、脂肪そのものが増生した感じでした。
 
下方に引っ張ったところ。左側よりも浅い位置にあり、眼輪筋の上です。眼輪筋の上に出来た境界不明瞭な脂肪腫といった感じでした。柔らかいです。

切り進めているところ。

切除した組織を並べてみました。
・・これ本当にフィラーかなあ?正常組織の増生のように見えます。 成長因子の注射とかで増大した組織もきっと、こんな感じじゃないだろうか?

術直後

すっきりきれいになりました。

この症例をUPした目的は、それ自体珍しいケースで参考になるだろうからという理由のほかに、もう一つあります。
最近手術のbefore/after写真ブログで出していなかったし、私も55才なので、「手術しばらく休止します」宣言して、「ああ、深谷先生もお年で手術への情熱が薄れてきたのか」と誤解されたら嫌だからです。
私には手術への情熱なんてありません。手術が好きだからやっていたのではなくて、手術が出来るからやっていた(いる)のです。
もし、本当に手術そのものが好きなら、最初から形成外科に行くか、大手美容外科に入職したでしょうね。
だけど、手術が好き=手術が出来る(上手)では決して無いですよ。手術が好きだけど下手な医者ってけっこう居ます。自分が医者だからよく解ります。車運転してると、自分より下手な運転って目に付くでしょう?車まったく運転しない人には解らないでしょうけど。

私は手術をしばらく休止しますが、それは私が手術が好きというわけではないからあっさりと出来ることなのであって、私の腕が衰えたとか、年で情熱が薄れたとか、そういうことではないです。上記症例掲示はその証明の意味もあります。ちゃんとこういう厄介で他の人が敬遠しそうな手術もしているし出来ますよ、ってことです。
だから、クリニックの予約状況が変わって、また必要だと判断したら再開します。そのときはよろしくですm(_ _)m。
もちろん、その時点で、年齢を感じて「もうやらないほうがいいな」と思えば、やらないでしょう。そのあたり、自分で言うのもなんですが、正直で誠実な人間なんです。
(2015年2月25日記)