スプリングアプトスによる胸の引き上げ(その1)

 
鶴舞公園クリニックの今月のご予約受付は10月2日でいっぱいになりました。次のご予約受付日は11月1日(火曜日)です。7ヵ月後の来年6月分のご予約をお受けいたします。公平のためお電話のみのご予約とさせていただいております(直接来院してのご予約は受け付けておりません)。ご了解くださいm(_ _)m。

注:スプリングアプトスは「スプリングスレッド」とは全く別物です→こちらこちら

胸の下がりを糸で引き上げる試みは、昔からいろいろされています。10年くらい前にアプトスの創始者スルマニゼが、鎖骨で折り返して糸を引っ掛ける方法を工夫していました。ちょっと大がかりでプチ整形の域を超えます。
実は私もときどき思い出したように、アイデアをひねるのですが、なかなかうまくいきません。お顔のたるみと違って、胸はボリュームがあるからでしょう。
今回、スプリングアプトス(自作糸なので、「スプリングアプトスもどき」ですが・・)という伸縮系の糸でやってみたところ、ちょっと良さそうかな?という感触を得たので、ご紹介です。
モニターはお友達のお友達です。・・さすがに胸ってのは、スタッフも簡単には協力してくれません。ほかのスタッフたちの前であらわになるわけだし。
 
術前 左胸(向かって右)が下がっています。これを右に合わせるべく引き上げるのが今回のミッションです。

下はイメージ。この方向にコイル状の糸を入れて引き上げます。

赤矢印がデザイン。この方向に3本挿入します。

施術動画です。YoutubeにUpしました。画像をクリックするとリンクに飛びます。ちょっと痛そうですが、静脈麻酔下なので、本人は痛くも怖くもないです。
 https://www.youtube.com/watch?v=kfS6Ry-qDGs 

直後。完全ではないですが、ちょっと引きあがりました。

疑い深い方のために、両肩と両乳頭を青い線でつないで比べてみました。

Youtubeの動画の最後の英語のキャプション、”That's one small step for woman, one giant leap for womankind.”は、月面に踏み出したアームストロング船長のせりふのもじりです。「一人の女性にとっては小さな一歩だが、全女性にとっての大きな第一歩。」
まあ、そんな大げさな話でもないんですが、アメリカンジョークです(^^;。笑ってください。
 
この胸のスプリングアプトスによる引き上げ、長期効果もわからないし、そもそもうちのクリニック、私一人でやってるんで予約入れる余地もないので、正規メニューにはまだ上げてないです。常連さんで気心知れている方、もしくは、女医さんでモニター志願の方(もちろんお顔も名前も出しません)いらっしゃったらご連絡ください。お代は仕上がりに応じて相談して決めましょう(^^;。この方のように、左右差があって整えてみたいという方などは、結果が解りやすいのでいいと思います。

今回は試験的なので3本ですが、感触としては、片側に10~20本くらい入れるとしっかり上がるんじゃないかと思います。とりあえずこの方、半年ほど経過を見て良さそうなら追加入れます。またここに報告しますね。
(2016/09/22 記)
鶴舞公園クリニック 院長 深谷元継

ヒアルロン酸注射で失明させないために(その5)

 
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前回(「その4」→こちら)の続きです、と言っても、前回の記事を書いてからもう2年近くになるのかあ・・。早いものですね。
先回は、先端が鈍の細針を作って、鋭針で道を作った後にこれを挿入して、ヒアルロン酸を注射する、という二段階によって、安全にヒアルロン酸を注入できる、というところまでだったのですが、このやり方、必ずしもうまく行きません・・。
うまくいくこともあるのですが、予め鋭針で道を作っておいても、鈍針が進んでくれないことも多いです・・。
それでこの2年、ずっと何か良い方法はないか、と考えていたのですが、先日ようやく「これなら」という方法を思いつきました。まだアイデア段階ですが、記しておきます。
 
ヒアルロン酸の注射針が下図のように小動脈内に入ってしまうと、粘稠なヒアルロン酸が小動脈内に充満して塞栓を起こします。
そこで、下図のように、針先から2mmのところに、直径0.2mmの小孔をあけます。なぜ2mmかというと、小動脈というのは、最大で直径1mmくらいのようなので、45度角で針を挿入したときに血管外に小孔が出ているためには最低2mmくらい必要、との判断からです。
0.2mmというのは、30G針の内径が0.2mmだからです。

このような針でヒアルロン酸を打とうとすると、ヒアルロン酸は注射筒寄りの小孔から出るようです。
下はプラスチック製の針に炭酸ガスレーザーで小孔をあけたもので、ヒアルロン酸を詰めた注射筒につけて押し出したところです。手前の小孔からヒアルロン酸が出てきます。このような二孔針でヒアルロン酸を注射するには、少し慣れがいるとは思いますが、決して無理なことではないでしょう。


針の先端が小動脈内に入っているとき(下図)、ヒアルロン酸は手前の小孔から出るので、小動脈内の塞栓を起こしません。のみならず、小動脈内圧は、周辺の組織圧よりはるかに高いでしょうから、小動脈内の血液が針先から小孔へと逆流するでしょう(内出血)。

仮に針が突き抜けて、小孔がちょうど小動脈内にあるとどうでしょうか?小動脈内の圧は高いので針先(血管外)へと血流が生じ、それに押される格好で、ヒアルロン酸もまた、小孔ではなく針の先端口に出て行くと思います。
小動脈に当たったとき、内出血はするけれども、塞栓は起きにくいと考えられます。

善は急げ、早速オーダーメイド針の会社に特注を依頼しました。
出来上がったら、上記の私のアイデアが正しいかどうか、確認したいものです。
しかし、実際にヒトの血管に刺して確認するわけにはいかないし、マウスなどの動物で実験するには、動物実験施設がないと出来ないし・・。
そこで思いつきました。そうだ、活け造りのレストランに行ってみよう。新鮮な魚の血管なら、この実験のモデルになるかもしれない。
板さんに相談して、魚はヒラメと決まりました。身が透明だから血管がいちばん見やすいようです。

https://www.youtube.com/watch?v=D2GJLhTvDqk 
(写真をクリックすると動画が開きます)

ヒラメの血管は同定しやすく、30G針でヒアルロン酸を注射するのもさほど難しく無さそうでした。まだ試作の針は出来上がっていないので、予備実験として血管内に針を注射できるかがテーマです。
ここまでは、良かったのですが・・。
「先生、このヒラメは、今は死んでるっていうか、包丁入れて血抜きしてるけど、実際に試作針が出来て確認するときは、活きたヒラメでするの?あばれない?」
「魚の活け締めっていうのは、二つの段階があって、延髄を切ると神経がやられて魚は動かなくなる。大動脈を切ると、体内の血液が抜かれて、虚脱して血圧が下がる。だから、大動脈を傷つけないように、延髄(脊椎)を切ってもらえば、動かず、かつ血圧も保たれたヒラメが出来るはずだ。」
「先生、ところで、ヒラメの血圧ってどれくらい?」
「・・うーん、知らない。そういえば考えたこと無かった。」
早速スタッフがスマホで調べてくれました。魚の血圧というのは、だいたい20~40mmHgのようです。低い・・。
マウスは110mmHgくらいでした。
やっぱりどこかの動物実験施設を探すしかないか。
ということで、今回の実験は成功ではありますが、ここまでの結果となりました。
スタッフたちは、時ならぬ宴会で喜んでいました。「先生、高血圧の魚もいるかもしれないから、もっとこの実験繰り返しましょう」とのことでした。

(2016/09/15記)

鶴舞公園クリニック 院長 深谷元継

超音波によるたるみ治療器はヒアルロン酸を溶かす?

鶴舞公園クリニックの今月のご予約受付は9月2日でいっぱいになりました。次のご予約受付日は10月1日(土曜日)です。7ヵ月後の来年5月分のご予約をお受けいたします。公平のためお電話のみのご予約とさせていただいております(直接来院してのご予約は受け付けておりません)。ご了解くださいm(_ _)m。

ヒアルロン酸を注射したあとで、あるお客様から「先生、超音波美顔器はいつから使っていいでしょうか?」と聞かれました。
私はヒアルロン酸美容液の製作販売もしています(→こちら)。以前読んだ論文に「実験に用いたヒアルロン酸は、高分子量のものを超音波で小分子量に分解して作製した」と書いてあったことを思い出しました。
 
私「・・ヒアルロン酸は、超音波で分解されるから、あまり超音波美顔器は使わないほうがいいかもしれませんよ。」
お客様「そうなんですか!?、私、来月○○クリニックで超音波による若返り治療を予約しているんです。それもキャンセルしたほうがいいんでしょうか?」
 
最近、高密度焦点式超音波(HIFU:High Intensity Focused Ultrasound)というたるみ治療が流行っています。超音波を真皮や皮下組織に加えることで、その個所の温度を上げて、すなわち熱エネルギーによって、軽い瘢痕化・引き締めをするものと理解されています。ヒアルロン酸を注射したあとに、これを施術すれば、確かに分解しそうです。
ということは、この二つの施術は両立しないものなのでしょうか?・・

とりあえず、うちにはHIFUの機械はないので、まずはパワーが低いであろう超音波美顔器に関して実験してみることにしました。めがね洗浄器で代用しました。

https://www.youtube.com/watch?v=S23amnXayNs 
(画像をクリックするとYOUTUBE動画が開きます)

「パワーが低いであろう」と書きましたが、実際に実験して気がついたのですが、めがね洗浄器内の水は5分後にはやや温かくなっています。5分でタイマーが切れるようになっているので試しに3回(15分)繰り返してみたところ、明らかに水温上昇しています。水温が上昇した分のエネルギーが加わったということです。
HIFUの機械では、「当てられた皮下組織の温度が65~75℃へと急激に上昇します」とのことですから、めがね洗浄器内の水がその温度に達するまで繰り返せば、HIFUが照射されたと同じ条件になるのかもしれません。
HIFUをヒアルロン酸に直接照射したほうが、余程簡単です。スーパーで鶏肉買ってきて、ちょっと皮下注射したあとでHIFU当てて変化を見てみるといいと思います。誰かやってくれないかなあ・・。
 
さて、この記事は、「HIFUという施術は皮膚のヒアルロン酸を溶かしてしまうので、若返りに良くない」という主張をするためのものではありません。むしろ逆です。

どういうことかというと、低分子量のヒアルロン酸というのは、真皮の繊維芽細胞に働きかけて、コラーゲンの産生を促す作用があります(高分子量のヒアルロン酸にはありません)。HIFU施術が真皮内のヒアルロン酸を分解して低分子量ヒアルロン酸を生成するなら、それによる若返り効果というのは、単なる熱変性によるのではないのかもしれません。
真皮内に自然に存在する生理的なヒアルロン酸と言うのは、ターンオーバーが早く、確か24時間くらいで再生産されますから、HIFUを施術することで真皮のヒアルロン酸が全部分解されてスカスカになったままということはないです。

年配の方の細かいしわにチクチクとヒアルロン酸注射を打つと、何ヶ月か先にいらっしゃったときに、ヒアルロン酸を注射した部位のみならず、妙に全体に張りが出ているように感じることがあります。これはひょっとしたら、注射したヒアルロン酸が徐々に分解されるときに生成された低分子量ヒアルロン酸によって繊維芽細胞が刺激されて、コラーゲンが産生された結果かもしれませんね。

ただし、話を戻して、法令線などヒアルロン酸をボリュームアップの目的で入れたところには、HIFUを当てるのは避けたほうがいいかもしれませんね。多かれ少なかれ分解はされるでしょうから。

<論文を読んで勉強・確認したい方のために>
1 ヒアルロン酸が超音波で分解される話は
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/8173334
2 低分子量ヒアルロン酸が繊維芽細胞に働きかけてⅠ型コラーゲンを増やす話は
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18282267

(2016/09/06 記)

鶴舞公園クリニック 院長 深谷元継