来年の抱負


鶴舞公園クリニックの今月のご予約受付は1月10日でいっぱいになりました。次のご予約受付日は2月1日(水曜日、10:00-18:30)からです。7ヵ月後の来年9月分のご予約をお受けいたします。公平のためお電話のみのご予約とさせていただいております(直接来院してのご予約は受け付けておりません)。ご了解くださいm(_ _)m。

1 胸のスプリング糸での引き上げを、ナグモクリニック名古屋院の山口先生との共同研究で10人ほど施術する予定です。またここに告知します。

2 アトピー性皮膚炎の萎縮した皮膚(首や肘)にPRPが有効かどうかの検証を行います(→こちら)。こちらも10例。

3 もう一つ、アートメイク用色素を国内生産しようと画策しています。私の中での以前からの懸案だったのですが、来年一月に、池田先生が「医療アートメイク学会」を発足させ、そのことで厚労省と交流しておられるようなので、この機会に厚労省の理解を得て、製作しようと考えました。

なぜ、厚労省の理解が必要かというと、アートメイク用の色素は、皮内に埋め込むものなので、化粧品の範疇を越えて、医薬品扱いになると考えられるからです。
しかし、一般医薬品と同じ扱いで申請するとなると、巨額の資金が必要となり、現実的ではありません。医薬品としての認可は下りないまでも、後になって「薬事法に違反する」と言われない様に、厚労省に説明しておく必要があります。
 
アメリカでは、アートメイク用の色素は医薬品ではありません。化粧品です。なぜかというと、外見を改善し魅力を引き出す目的であるからです(The FDA has considered intradermal permanent makeup to be cosmetics because they are applied to the body for the purpose of altering appearance or promoting attractiveness.)(→こちら)。
同じ理由で、アメリカではアートメイク施術は医療行為ではありません。アメリカではアートメイク施術は各州が施術免許を発行して管理しているようです(The application of permanent makeup (and tattoos) is regulated as a commercial business in most states, requiring licensing and/or registration by most state health departments.)。
FDAはいかなるアートメイク用色素も承認してはいません(No pigments are approved by the FDA for use in permanent makeup.)。

さて、ここからが本論です。日本ではアートメイク施術は医療行為とされており(→こちら)、医師免許のない者の施術が警察に取り締まられるようになりました。私も含め美容系の医師たちは、これを新しいマーケットと考え、施術メニューに取り入れるところが増えています。
一方で、使用する色素はというと、アメリカなど海外からの輸入に頼っています。これでいいのでしょうか?
海外の色素は化粧品扱いですが、日本と異なり、成分開示の義務がありません。何が含まれているのか、まったく解らないままに施術が行われているわけです。無資格者が施術している時代にはそれで通ったでしょうが、医師が医療行為として施術するからには、成分を把握しておくくらいは最低限の倫理です。
「現状大きな問題は生じていないようだから、いいじゃないか」という楽観的な意見もあるかもしれませんが、そうでもないのです。実例があります。
1988年から2003年までの5年間に、FDAに寄せられたアートメイクの副作用報告はたった5件でした。ところが2003年には150件以上の副作用報告がありました。調べていくと、それらはPremier productsという会社が製造した色素を用いていることが判りました。
製品はリコールされましたが、原因となった成分の特定には至らなかったようです。The new England Journal of Medicineという医学雑誌にも掲載されています(→こちら)。
メーカーに成分表示の義務がないということは、内容の変更も可ということですから、原材料調達や仕入れなど何らかの理由で成分変更が行われることもあり得ます。ですから、これまで問題がなかった製品だからといって、今後も安全が保障されているというわけではありません。
ここに、私たち医師が、成分のはっきりしたアートメイク用色素を製造することの大義があります。
 
蛇足かもしれませんが、私はアートメイクやタトゥーを掘る作業そのものは、技術やデザインに優れている方であれば、医師免許を持っていなくてもよいと考えます。ただし、医師の監督というか、管理は必要だと思います。将来的には、アメリカ各州で発行されているようなライセンスを取得した施術者が、医師の管理の下で働けるようになるのが最善です。
 
さて、大きな風呂敷を広げましたが、実際にアートメイク用色素を試作し始めて、ちょっと頭を抱えています。私は、現在はプチ整形専門の美容医師ですが、日本皮膚科学会認定皮膚科専門医ですし、以前は接触皮膚炎学会や日本アレルギー学会の会員でした。化粧品関係のアレルギーに関しては、Fischer’s Contact Dermatitisというバイブルのようなデータベースがあります。成分をこれに一つ一つ照らし合わせて、アレルギーを起こしにくい色素を調合すればいいくらいに考えていました。

ところが、問題が浮き上がってきました。それは「肉芽反応」です。異物に対して組織が反応して、増殖して盛り上がってくる現象で、これはそもそもアレルギーではないから、接触皮膚炎のデータベースには無いし、そもそも化粧品というのは肌の上からつけるものなので、皮内に注入した時の反応に関してはまったく未知です。

肉芽反応というのは、成分(物質)によって起こしやすさが異なるようです。起こしやすい代表的なものには、例えばシリコンやアルミニウムがあります。
アートメイク用の色素を、複数の化粧品製造メーカーに試作をお願いしたのですが、メイク化粧品に強いある会社から「色素はシリコンコーティングされたものを用いますから、直接組織と接触しないので安全性が高いと思います」と言われてぞっとしました。なるほど、メイクに用いる色素というのは、お肌への乗りや触感を大切にしますから、シリコンコーティングするメリットは大きいでしょう。しかし、アートメイクには不適です。

幸いにもネット上で英語サイトですが、基本的なアートメイク用の色素の成分表示が見つかりました。これを参考にして、一つ一つ吟味していくしか無さそうです。
しかし重要なことですから、なんとか試作にこぎつけようと思います。
 
試作したあと、実際に人に施術するのは、誰に行えばいいでしょうか?わたしは来年58才、だいぶ頭髪も薄くなってきました。
「ここの前髪の薄くなった辺りに施術して、色具合とか実験すれば一石二鳥でいいんじゃないかな?」
「先生、その薄くなったところ、3年後も同じように毛が生えているとは限らないのよ。」
なるほど、今は薄くなったところが色がついてちょうどいいと思っても、将来禿げ上がってきたときにその箇所だけ落書きみたいに色素が出てきたらさすがに恰好悪いです。
スタッフはじめ色々な人に相談しながら、来年も新しいことを開拓していきたいと思います。
 
Dance before the music is over, live before your life is over.(音楽が終わらないうちに踊りなさい。人生が終わる前にしっかりと生きなさい。)
(H28.12.29記)

鶴舞公園クリニック 院長 深谷元継

切らない眼瞼下垂手術・その6


鶴舞公園クリニックの今月のご予約受付は12月2日でいっぱいになりました。次のご予約受付日は1月5日(木曜日、10:00-18:30)です。7ヵ月後の来年8月分のご予約をお受けいたします。公平のためお電話のみのご予約とさせていただいております(直接来院してのご予約は受け付けておりません)。ご了解くださいm(_ _)m。

現在、クリニック混んでいて、目回りの手術のご予約は休止しています。休止してはいるのですが、昔の知人が久しぶりに現れて、重そうな瞼を一生懸命挙げているのをみると、ついつい声をかけて施術してしまいます。
左眼の眼瞼下垂が著明です。目の上がくぼんで四重五重になっていて、額の筋肉を使ってがんばって目を開けているため、眉が上がって額にしわが入っています。

下は、開院祝いで来てくれた13年前の写真。もう13年会ってなかったんだなあ。。振り返ってみると、このころから、左眼瞼下垂の兆しはありましたね。

 一針、5分で手術は終了します(→こちら 注:動画は施術の解説で別の人です)。術直後の写真がこちら。

下の写真は、12日後です。戻りがないので成功です。この施術は、誰に対しても必ず成功するというものではないですが、1週間たって戻りが無く、痛みや違和感もなければ成功です。効果は永続します。

 それで今回思いついたことがあって実践してみたんで、ここからが本論です。この施術、一見うまくいったようでも、目の裏側からナイロン糸を通して引き上げるので、糸の断端が角膜に細かいひっかき傷のようなものを付けることがあります。症状はとくにないのですが、たまたま眼科で検診受けたときに指摘されてびっくりして問い合わせを受けることがあります。

糸を外してやり直せばよいだけのことですが、施術した後、一回眼科を受診させて診てもらっておいたらどうだろう?と考えました。角膜の細かい傷っていうのは、肉眼では見えません。眼科でスリットランプという機械で確認するのが一番確実です。

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〇〇様ご紹介申し上げます。左眼瞼下垂に対して、上瞼結膜側から糸を刺入し、ミュラー筋・挙筋をタッキングして引き上げるという施術を行いました。この施術では、ときに糸断端が角膜に当たって細かい傷をつけることがありますので、眼科での術後の確認が望ましいと考え、ご紹介申し上げました。お忙しいところ恐縮ですが、よろしくお願いいたします
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お返事はすぐ来ました。
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本日診させていただきました。角膜に傷はありませんでした。ご紹介ありがとうございました。
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これですっきり、安心して手術終了です。「切らない眼瞼下垂」の手術をするときには、術後の眼科検診をセットにするのが合理的ですね。

さて、そう考えたとき、この手術、そもそも眼科でやったほうがいいのじゃないだろうか?と考えに至りました。
眼科で保険診療で眼瞼下垂の手術に力を入れているところはあまりないんじゃないかと思います。それは、切開して行う手術の場合、時間や経費を考えて、採算が合わないからだと思います。
それに比べると、この「切らない眼瞼下垂」手術は、時間も手間もかかりません。保険診療で眼瞼下垂の手術をするにあたって、術式まで指定されているわけではないから、この術式で保険請求したってよいのではないでしょうか?ここは、解釈の問題なので、私が勝手に決めることではないのですが。

東京では、うちに勉強にいらっしゃった眼科の女医さんが、すでに施術メニューに入れています(→こちら)。

私が教えたのだから、うちとほぼ同じやり方です。関東方面の方、よかったら行ってみてください。ただし、この施術、加齢による眼瞼下垂にしか効きません。若い方の先天性(うまれつき)の眼瞼下垂には効きませんから、ご注意くださいね。

この施術習得したいという眼科の先生、いらっしゃいましたらお気軽にご連絡ください。上述したように、現在うちで予約は受け付けていませんが、どなたか患者さんおひとり連れてきていただければご教示いたします。
(2016/12/24 記)

鶴舞公園クリニック 院長 深谷元継

ヒアルロン酸注射で失明させないために(その6)


鶴舞公園クリニックの今月のご予約受付は12月2日でいっぱいになりました。次のご予約受付日は1月5日(木曜日、10:00-18:30)です。7ヵ月後の来年8月分のご予約をお受けいたします。公平のためお電話のみのご予約とさせていただいております(直接来院してのご予約は受け付けておりません)。ご了解くださいm(_ _)m。

前回、針を工夫して試作品を作ってみる話まででした(→こちら)が、試作品ができたので、浜松にある動物実験施設をお借りして、ウサギの耳で実験してみました。
今回は動物実験のお話なので、苦手な方はご遠慮ください。法令を遵守し、目的を明確にして倫理委員会の承認を得たうえでの実験です。ヒアルロン酸注射による失明という重篤な事故を回避するための、真面目な取り組みです。

試作した針はこちら。

設計通り、先端から少し離れたところに小穴が開いています。

シリンジに付けて、ヒアルロン酸を押し出したところ。側穴からほとんどが出ます。なので、注射時には少し慣れが要りそうです。

実際にウサギの耳で実験したところ。YoutubeにUPしました。
https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEgp3QS29ram1gSbiJw-BnwfFasPj1jB2Zn-VVMshtPDPlhbEYTcfJVR5pPnsFdIG-yjGtSgMHqKwJgozdsVquphbr2eNHfhN1zDRw-bTHOiDU9fL-eh94rdLk77Nj0gUkA0yDvOdiDfGoha/s320/%25E3%2583%259E%25E3%2582%25A4+%25E3%2583%25A0%25E3%2583%25BC%25E3%2583%2593%25E3%2583%25BC%25EF%25BC%2592.mp4_000015348.jpg 

さて、実験も終わって、和子先生に助手として同行してもらったので、二人で慰労会です。浜松はすっぽんの養殖場があってお値打ちらしいので、すっぽんコースにしました。

「昔、国立病院の勤務医だったころは、よくこうやって二人でランチしたよなー♡」
「そんなこともあったっけ?子供産んだらみんな忘れちゃった♪」
男性の未来は闇、女性の過去は闇、こっちが楽しい思い出として共有したいことっていうのは、たいてい相手は忘れてますね。まあいいけど(^^;。
 (2016/12/15 記)

続報→こちら。この方法(側孔開ける方法)では駄目みたいです・・。

鶴舞公園クリニック 院長 深谷元継

糸でのたるみ引き上げの効果をわかりやすく見せるための工夫(その2)

 
鶴舞公園クリニックの今月のご予約受付は12月2日でいっぱいになりました。次のご予約受付日は1月5日(木曜日、10:00-18:30)です。7ヵ月後の来年8月分のご予約をお受けいたします。公平のためお電話のみのご予約とさせていただいております(直接来院してのご予約は受け付けておりません)。ご了解くださいm(_ _)m。

先回のbefore/afterの写真(→こちら)に関連して、ふと思いついて実験してみました。
a-d、4枚の写真を一枚づつうちのスタッフにみせて、それぞれ何才に見えるかを言ってもらいました。aは施術前、bは施術後で、cdはabをモノクロにしてコントラストを強調したものです。

スタッフ5人に行った結果が下表です。
単位:才

たとえば、スタッフ1はaの写真を34才、bを31才と判定したということです。
平均をみると、
1) a<c, b<d、すなわち、モノクロにしてコントラストを強くしたほうが老けて見える
2) (a-b) < (c-d)、すなわち、モノクロにしてコントラストを強くしたほうが、差が強調される
ということが言えそうな気がします。
 
n=5ですが統計学的にはどうなんでしょうか?対応のあるt検定でp値を出してみると、

通常 <0.05 で有意差ありと判定します。1)は有意ですが、2)はp=0.07ですから有意差出ません。
n=5ですから、判定者の数増やしていくと有意差出てくるかもしれませんが。
 
もうひとつ、検定してみて気が付いたのですが、
3) aとcでは有意差出るが、bとdでは有意差が出ない、すなわち、「たるみが少なくなると、カラーとモノクロとの差がなくなる」
ということも言えそうです。
 
・・面白くないですか?わたしは、かなり興味深いです。
これまで「たるみ」や見た目の老化って数値化しにくかったですからねー。
n数増やしたり、判定者を年齢区分して(同年代のひとのほうが正しく判定しそうな気がする)、検討してみようと思います。
 
ちなみにこの方、実年齢はaのとき30才、bのとき34才で、スタッフ5人の評価の平均値がaが34.8才でbが30.6ですから、実年齢より約5才老けて見えていた人が、実年齢より約3才若くみられるようになったということになります。
(2016/12/11 記)

鶴舞公園クリニック 院長 深谷元継

糸でのたるみ引き上げの効果をわかりやすく見せるための工夫(その1)

鶴舞公園クリニックの今月のご予約受付は12月2日でいっぱいになりました。次のご予約受付日は1月5日(木曜日、10:00-18:30)です。7ヵ月後の来年8月分のご予約をお受けいたします。公平のためお電話のみのご予約とさせていただいております(直接来院してのご予約は受け付けておりません)。ご了解くださいm(_ _)m。

下の写真は、うちで4年間で3回糸入れた方のbefore/afterです(上は初診時、下は4回目の糸入れるために来院されたときの術前写真)。ご本人はいたって満足で、ブログでの写真使用もご許可いただいたのですが、変化わかりますか?



私はもちろんわかるし、うちのスタッフたちも慣れているからわかるんですが、中には「わかりにくい」と言う方もいるようです。
それでちょっと工夫してみました。下は同じ写真をphotoshopで色を削除してコントラストを強調したものです。


変化が判りやすくなりました。
間違いのないように念を押しますが、上が4年前、下が4年後です。年齢で4才違います。逆みたいでしょ?
 
たるみっていうのは、数値化しにくいので、before/afterの画像変化でとらえるしかないのですが、いずれは3Dの技術も進んで、こういった画像のたるみの具合を数値化できるのかもしれません。・・ていうか、技術的にはもう出来るのかも。
早くそうなるといいなあ。そうすれは、説得力ありますからね。

さて閑話休題、スタジオの和子先生から差し入れで「うなぎの刺身」が届きました。みんなで分けて今日のお茶受けです。写真は私の分↓


うなぎっていうのは、生血に有毒成分が含まれているので、刺身では食べられないものなのですが、ここのお店は、どうやっているのか判りませんが、これを取り除いて刺身にして通販もやっているようです。
「何も、わざわざ毒抜きまでして、うなぎを刺身でたべなくてもいいじゃないか、蒲焼で十分美味しいし」という意見もあろうかと思いますが、それでもうなぎを刺身で食べてやろう、と、思った人がいたのでしょう。
そういう考え方、姿勢は、私は「好き」というよりも、まるで自分自身を見ているようで共感します。どうやって血を抜こうか考えて商品開発してるときは、さぞかし楽しかったんだろうなあ。
 
お顔のたるみを引き上げるって、たるんだら人間死んじゃうわけじゃあるまいし、正直そんなに大層な問題じゃないんですよ(^^;。しかし、これをいかに引き上げるか。その工夫をする過程が私は好きです。
 
うなぎの刺身、味は脂ののったふぐという感じです。おいしいけど、かばやきのほうが私は好き(^^;。だけど、一回くらいは、ネット通販でも売られてるみたいだし、お取り寄せして食べてみてもいいと思いますよ。ごちそうさまでした。
(2016/12/07 記)

鶴舞公園クリニック 院長 深谷元継