成長因子(b-FGF)タトゥーしてみました


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先回(→こちら)の続きです。アートメイクというのは、大分子量の物質や粒子を、真皮内に届けるDrug Delivery Systemと一般化することが出来ます。そこで、ヒアルロン酸に続いて、成長因子(b-FGF)でも試してみることにしました。

b-FGFは、これを注射あるいはPRPに混ぜて注射すると、脂肪細胞由来幹細胞(ADSC)が分化増殖して、ボコることがあるのは、ご存知の通りです。このブログでもたびたび指摘してきました。幹細胞が脂肪に分化すれば、体積が急増するし、骨芽細胞に分化すれば硬いしこりになります。
しかし、アートメイクの手法で真皮内に入れてやるだけなら、真皮には幹細胞は存在せず、すでに分化してしまった繊維芽細胞だけですから、安全なはずです。
凹みを埋めるほどのボリューム効果は出ませんが、コラーゲン増生によって張りが出て小じわが消えるはずです。
まず薬液の調整です。以前いろいろ調べた結果が役に立ちます。札幌医大の小野先生のb-FGF注射のプロトコルは10μg/mlでした(→こちら)。
昨年報告された聖心美容外科の鎌倉先生の論文ではPRPに10~20μg/ml添加されています(→こちら)。
川添先生らのクローズドな研究会での濃度は、これは伝聞で間接情報なので確かではないのですが、「250μgのb-FGFを2.5mlで溶かし、そのうちの0.1mlをPRPに添加する」とのことなので、PRPを仮に1mlとすれば、やはり10μg/mlです。
ちなみに、基礎データからの私の見積もりとしては、100ng/ml、すなわち3人の先生方の濃度の百分の一の濃度で、効果は頭打ちになります(→こちら)。
もっとも、基礎データは、培養細胞の培地濃度で、実際に注射したときには、これが周辺に拡散希釈されていくわけですから、100ng/mlの百倍の10μg/mlというのは、案外妥当なのかもしれませんが。
 
ということで、今回のタトゥーで用いるb-FGF濃度も、10μg/mlで調整します。ただし、タトゥーで押し込めて入れるので、ただの生食ではなく、粘稠なヒアルロン酸にしようと思いました。
ヒアルロン酸は化粧品製作用の粉末を用います。b-FGF溶液にヒアルロン酸粉末を1%加えて約一日置くと、とろっとしたゼリー状のb-FGFジェルが出来ます。下写真は使用したb-FGF製剤(フィブラストスプレー)、生食とヒアルロン酸粉末。

モニターは例によって私の母親です。82才になります。エムラクリームで麻酔しているところ。


施術の様子です。動画にとってYoutubeにあげました。

使用したb-FGFジェルは0.7ml、b-FGF総量で0.7μgになります。真皮内に入ったのは1/100として7ngくらいでしょうか?微量ですが、実際に生体内で産生されたり放出されたりしている成長因子の量って、そのくらいじゃないかと思います。レセプターにくっついて活性化させる鍵みたいな物質であって、ヒアルロン酸みたいに量で形を作るものじゃないですから。
 
あくまで実験です。まだメニューには載せません。半年から一年の経過をみて、良さそうであれば、総合病院の倫理委員会にかけて、10例くらいのコフォート研究から始めようかと考えています。来年の課題かな・・。2年後に医療アートメイク学会が公益法人になるから、それから他の先生方との共同研究という形で進めるのがいいかもしれません。

b-FGFに限らず、いろいろな幹細胞培養液なんかも、この手法で小じわなんかに導入可能です。
ただ、この方法、どっかの悪いクリニックが、さも自分も同じこと考えてましたとか、自分は何年も前からもうやってまーす、みたいなこと言い出して、早速、診療メニューにあげるかもしれませんね・・。
安全性高そうな気はしますが(だから母親に施術しました)、結果は未知です。結果が未知にも関わらず、お客様に提供したとしたら、いくら同意があったとしても、それは不誠実というものです。
美容医療の業界、何でもありみたいなところもあるし、確かにそこが魅力でもあるのですが、医者としての誠は通したいものです。
(2017/02/08 記)

鶴舞公園クリニック 院長 深谷元継