ピコレーザーはなぜ低出力でしみが取れるのか?(その1)


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前回(→こちら)の続きです。
(Qスイッチレーザーには、従来からあるナノレーザーと、新しいピコレーザーとがあります。ピコレーザーでしみを取ることの意味についての考察です)

ピコレーザーは、タトゥー色素の除去に効果的です。これは解ります。いわゆる衝撃波によるphotodynamic effectによって、硬い個体である色素が砕けるからです。
しかし、しみの茶色を作っているのは、メラニンなどの有機物で柔らかいです。柔らかいものに衝撃波は効かないでしょう。腎結石の衝撃波治療で腎臓まで砕けたら大変です。
 
実際にピコレーザーでしみを取ってみると、ナノレーザーよりも
1)ピコレーザーのほうが痛みが少ない。
2)照射エネルギー(フルエンス)が1/4くらいで済む。
という感触です。
1)は、パルス幅が短ければ、痛みが瞬間的に過ぎるので、軽く感じるためかもしれません。
2)が解りません。先回、黒い紙と感熱紙とを用いた実験で、ナノレーザーの2J/cm2が、脱色においても、発熱量においても、ピコレーザーの0.5J/cm2に相当することは確認しました。注:感熱紙の発色は二種類の化学物質が熱で溶けて混ざりあうことによります。ピコレーザーには固体を破砕するphotodynamic effectがあるので、熱以外の理由で発色している可能性があります)
いろいろ検索して、これが関係あるのかもしれない、という文献を見つけました(→こちら)。
まったく関係のない工学系の論文ですが、この中に以下のような記述があります。

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「励起光として超短パルスを用いれば、なぜレーザーエネルギーを効率よく吸収させられるかという点についてであるが、クラスターは局所的な密度が個体密度であるため、その密度が維持されている間はレーザーエネルギーを効率よく吸収することができる。エネルギーの吸収のメカニズムはいわゆる古典吸収を考えればよい。もう少し一般的に表現するとすれば、レーザー電解によりイオン化した電子がクラスター中をジグザグ運動し、AC電流が生じる。このAC電流によるジュール加熱によりレーザーエネルギーが熱電子に効率よく受け渡される。しかるに、クラスターの温度がレーザー照射により瞬時に上昇すれば、クーロン爆発あるいはクラスターの温度上昇に伴う急激な膨張運動が発生し、たちどころに電子密度が低下し、ジュール加熱が行えなくなる。したがって、パルス幅の長いレーザーを使った場合、レーザーエネルギーの大半はターゲットを素通りしてしまう。これに対し、クラスターの膨張時間スケールより十分短いパルスで加熱すれば、密度低下が起こる前にレーザーエネルギーが熱電子に受け渡されると考えられる。このような相互作用時間の目安としてクラスターの分解時間τexを考える。・・(中略)・・τexはピコ秒程度と見積もられ、上述の相互作用を起こすには超短パルスが必要であることがわかる」
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全然関係のない工学系の論文の記述からの、ただの類推なので、赤っ恥かくレベルの勘違いかもしれませんが、ナノレーザー・ピコレーザーとメラニンの関係に置き換えると、下図のような感じになるんじゃないかと思います。


メラニン顆粒は、最初は、固体(および水などの液体)です。この状態だと、レーザー光のエネルギーは効率的に吸収されます。しかし、ピコセカンドレベルの短時間経つと、一部が気化します。すると、エネルギー吸収効率が悪くなります。すなわち、ナノレーザーの場合、レーザー光のうち、メラニンに効率よく吸収されるのは、初めのほうの一部分のみです。後半のレーザー光はメラニンを素通りして、より深部に進んで、組織に吸収されるでしょう。それは生体には痛みとして感じられます。
ピコレーザーの場合は、メラニンが気化する前にすべてのレーザー光エネルギーが照射されるので、メラニンへの吸収効率が良いです。
 
そう考えると、ピコレーザーでしみ取りをする場合に、エネルギー効率が良いのも、痛みが少ないのも頷けます。( 「固体」とか「気体」とかという表現は例えとしても混乱の元だし、エンライトンのパルス幅は750ピコセカンドと長く、上図の右側の青の縦線はもっと左寄りになります。「非線形吸収によるクーロン爆発」という考え方のほうが、エネルギー効率の良さを説明しやすそうです→こちらにまとめ直しました)

エネルギー効率がいい、っていう特徴を、どう生かすかというか、ピコレーザーのメリットですが、
1) 何度も記すように、ナノレーザーよりも痛みが少ない。
2) 与えるエネルギーが少なくて済む=活性酸素の発生も少ない、ということなので、活性酸素を処理するために産生されるメラニンの新たな産生も少ないはずです。すなわち、炎症後の色素沈着予防や、肝斑でのトーニングやカーボンピーリングでの効果も期待できます。

ただし、その特性を生かすためには、必要以上に高出力にしないようにという配慮が必要でしょう。そこを理解せずに、「ピコレーザーでパルス幅短いから大丈夫のはずだ」と、高いフルエンス値でしみ取りやトーニングをすれば、やっぱり戻りじみ強く出たり、肝斑悪くなったりするんじゃないかと思います。
 
と、いろいろ考えると、ピコレーザー、やっぱり買って良かった、買うべきだった、と思うんですが、初期不良で壊れてしまっては、話が始まりません。今日も代車ならぬ代機のピコレーザーでしみ取りの施術していますが、私のピコレーザー、ちゃんと壊れなくなって帰ってきてくれるかなあ・・。
先日知人に、この話したら、「外車買ったみたいだね」と言われました。たしかに外車も、魅力的な反面、故障も多いって言いますからねー。
(2017/06/03 記)

本記事は、いろいろ突っ込み所が多いので、書き直しました→こちら

疑問ほぼ解決しました!→こちら