多血小板血漿4:少量PRP液のもっとも合理的な作成法(簡易だけれど、たぶんこれが大正解)


多血小板血漿3は→こちら
多血小板血漿5は→こちら
 
 PRP液の作成法についての続きです。退屈に思われる方も多いでしょうが、私も男の子なんで、こういう工作とか工夫みたいなこと好きなんです。お付き合いください。
 今日は、またまたふと閃いたのですが、

「シリンジ(注射器)で採血して、それを試験管に移さず、シリンジごと遠心分離は出来ないだろうか?」

 もし、これが可能なら、ずいぶんと手間が省けるような気がします。
 そこで実験してみました。

 まず、プラスチック製の注射器の「耳」を切り取ります。このままだと、遠心分離機のバケットに入らないからです。

 普通の工作はさみで切れます。出来上がりこんな感じ。

 これに、抗凝固剤を加えて採血し、遠心機に入れます。

 どうなると、思います?シリンジの内筒が押されて遠心機が血だらけになるでしょうか?

 実は、事前に、水で実験してあるので、大丈夫ということは判っているのですが、内筒(の黒いゴム部分)と、外筒との摩擦抵抗は結構大きいようで、先に紹介した福田先生の論文(→こちら)の条件(=遠心力178×g)だと、内筒は、ずれません。

なので、遠心終了後はこんな感じです。うまく分離されてます。


 これを取り出して並べます。試験管立てが無いので、テープで下を止めて倒れないようにしてあります。

 これに、短い(10cm)の延長チューブと針をつけて、シリンジの外筒を押し下げると、血漿が採れます。

 神経を使うピペット操作が要りません。シリンジ外筒を押し下げるだけで、ぎりぎりまできれいに採取できます。「そんなうますぎる話が」と疑う方はやってみてください。やってみれば嘘じゃないことが解ります。

 最後は、延長チューブをクランプして外した後、延長チューブを立ててやれば、全量シリンジに集まります。


 これをもう一度、遠心分離します(二回目)。出来たものが下の写真。
これの上方を、PPPとみなして延長チューブを用いて上と同様に採取して捨てます。

 残った下層をPRPとして、治療に使います。下写真は、1mlシリンジで吸っているところ。
これで、20ml(5ml×4本)の全血から、3mlのPRPが出来ました。

 以上です。この方法の最大のメリット(自画自賛で恐縮です)は、シリンジと延長チューブと針しか使っていないので、血液は、医療用の材料だけを経由してPRPへと分離濃縮されているというところです。材料に関して、非常に衛生的で安心です(安価でもある)。

 ここ見ていらっしゃる女医さんや看護婦さんで、器用な人なら、明日にでもPRP液作って自分で自分に打てるんじゃないかなあ。

 遠心機も、福田先生の論文データ(1000rpm@ロータ半径16cm=178×g)なら、高価なものは要りません。
 注意事項が一点。ロータ半径によって遠心加速度は変化します。私が今回使ったのは、ロータ半径9.5cmのものですが、シリンジの内筒部分のロスを考えると、下図のように有効半径は4.1cmとなります。すると、178×gは1970rpmに相当します(http://www.hitachi-koki.co.jp/himac/support/riron.html参照)。手持ちの遠心機のロータ半径・傾斜角度・シリンジ内筒長さに応じて回転数を計算しなおす必要があります。
これ、実は、見学にいらっしゃっていた女医さんと、お昼ご飯食べてPRPの話しながら思いついて、速攻でクリニックに帰って、その女医さんの血液とってやらせてもらったんですが(だから私服のまま)、その女医さんから夕方届いたメールがこちら。
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もう全然痛くない♪
ほとんどあとも気にならない♪
面白かったしとても感心しました。ありがとうございました(^^)/
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(追記)
 延長チューブに三方活栓付けると、PPPやPRP吸引時に完全にクローズドになって、さらに扱いやすいです。シリンジ押し下げながら、もう片方吸引しないといけないので、ちょっと慣れが必要ですが。

 一回目の遠心と二回目の遠心の間は、延長チューブを三方活栓下写真のように刺しておくと、一回目のがそのまま使えます。

(追記2)
 お昼休みに東急ハンズでステンレス板買ってきて、シリンジ立て作ってみました。これは便利。
          (写真または→こちらをクリック)
(2012年2月17日記)